2016年3月15日火曜日

吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書、2016年)

「文系は役に立たないかもしれないが価値がある」ではなく「文系は役に立つ」という主張を述べるために、「役に立つ」ということを、目的遂行型と価値創造型のふたつに分けて、文系は後者の意味で、そして長期的には必ず「役に立つ」ということを主張した新書。
真正面からこの問題に答えていて頼もしい。
価値創造型の「役に立つ」が具体的にどのようなものか、ということを、もっと多くの実例を上げつつ示しておいて欲しかったなあ、と思った。そしたら、僕も、文系なんか要らないと思っている人々に対して文系の有用性を話すときに、「例えば…みたいなことがあるでしょ?!」とか使えたのに。
議論の展開がいちいち具体的に論理的なのが一流の文系の学者だなあ、と思う。人文社会系、リベラルアーツ、一般教養、等々の言葉と概念の違いも明確に説明するとか、19世紀以降のいわゆる「文系の知」の根本的な問題圏域はすべて「価値(の構築プロセス)」の周辺に会ったことを丁寧に示したりとか、入試、就活、学部、学年、言語という日本の大学を守る「5つの壁」を突き破る具体的方策を提案するとか。

吉見先生のゼミのやり方の一つとして「アタック・ミー」というものがあるらしい。先行研究批判をする方法を学生に体得させるために、教師自身の論考などを学生に批判させるゼミらしい。この「論文ゼミ」もすごそうだ。日英バイリンガルで運営しているらしい。こういうゼミを運営できる大学は極めて限られている気もするが。そして、僕にこんなことできるだろうか?! 僕もこういうゼミで勉強したい。



「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)
吉見 俊哉
4087208230

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以下、http://www.yoshimi-lab.jp/seminar/seminar-a.html より


論文ゼミについて


1990年代末から10年以上にわたり、論文指導の一環として
「論文ゼミナール」を隔週で開催してきた。
その中から、すでに多くの社会学者、メディア研究者が巣立っている。


論文ゼミナールの基本的な進め方は以下の通り。
  1. 隔週で定期開催し、各回3時間とする。
  2. 毎回、発表者は3人。発表時間は20分以内で、1人当たりの討論は40分
  3. 使用言語は、英語または日本語。
  4. ゼミナールの目標は、より水準の高い修士論文、博士論文の完成にある。

発表にあたっての心構えは、以下の3点。
  1. 自分たちはアウトサイダーだ(インサイダーと勝負する度胸と知力をつけよう)
  2. 書くこと、話すことで考える(閉じこもらずに、不完全な自分をさらしていこう)
  3. 才能とは執念だ(でも、時には自分自身の足元を疑ってみよう)
  
論文を執筆していく上での要点は、以下の通り。
  1. 論文の基本要件
    1. 問題意識の明確化
    2. 先行研究のレビュー
    3. 分析枠組(+仮説)の構築
    4. フィールドワーク(データ収集・分析)
    5. 結論と評価
  2. 批判の論点の明確化
  3. 批判が該当する具体的記述の抽出
  4. 批判の方法的基準
    1. (実証の)妥当性の基準 → 反証データの提示
    2. (論理の)整合性の基準 → 論理的矛盾の具体的指摘
    3. (結論の)有用性の基準 → 批判者自身の価値判断基準の明示
  5. 背後仮説(Background Assumption)への理論的批判
  6. 代替的モデルの提示

2016年3月11日金曜日

[宣伝]音響文化研究会トーク・イベント#4 のお知らせ

音響文化研究会第四回目、以下の要領で開催します。
どうぞよろしくお願いします。
僕も「れきおん」のサイトで予習して行きます。
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#4 過去の音と向き合う ―― 録音アーカイヴの取り組み

ゲスト 藤本草(公益財団法人日本伝統文化振興財団会長)
2016年3月11日 (金) 19:00〜21:00 MEDIASHOP(京都市中京区)入場無料

レコードが音を聴くための手段として定着してから百年以上が経ち、膨大な数の録音物が作られてきました。さまざまな分野で過去の資料のデジタル化が進められている現在、蓄積された「過去の音」とどのように向き合うかが問われています。そこで、国立国会図書館が公開している20世紀前半の録音アーカイヴ「れきおん」の構築に携わられた藤本草さんをお迎えして、同アーカイヴ設立の経緯や理念、録音アーカイヴ作りの実務上の課題などについてお話を伺います。
参考サイト: れきおん(歴史的音源) – 国立国会図書館
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