2019年2月7日木曜日

Christoph Coxがサウンド・アートを論じた単著。目新しい主張はないと思うけど、僕がだらだら考えてきたことを整理してもらっていて、とてもありがたい。
Cox, Christoph. 2018. Sonic Flux: Sound, Art, and Metaphysics. Chicago, IL: The University of Chicago Press.

〈19世紀末以降に音響再生産技術が開拓したsonic fluxは音や聴取のあり方を変化させた、あるいは新しい音響と聴取を生み出した、それら新しい音と聴取を扱う芸術をsound artと呼ぼう〉

要約してしまえばこんな感じだと思う。これくらいシンプルにまとめることも大事なんだな、と思った(まだ全部読んでないけど)。



たぶんCoxの手柄は、「サウンド・アートとは…だ」と定義づけることではなく、〈音や聴取の諸条件を問い直すような音響芸術が出現していること〉を歴史的理論的に明示すること、にある。そのような音響芸術を「サウンド・アート」と呼ぶかどうかは二次的な問題だ。
20世紀以降の音響再生産技術の展開とゲンダイオンガクにおける楽譜の機能の変化について論じる章では、ジャック・アタリとクリス・カトラーという馴染みの名前を使っているだけなのだが、〈sound artとはsonic fluxを固定するものだ、と考える〉という補助線を加えるだけで、見えてくる風景はかなり新鮮なものになる。Coxの立場は

1.ゲンダイオンガクと音響メディアの歴史の二軸から、音響と聴取の変容について語ろうとする立場
2.〈ゲンダイオンガク「以降」の音響芸術〉の呼び名として「sound art」というレッテルを使おうとする立場

と言えるかもしれない。この立場を歴史的・理論的に整理したのが本書だと言えるかもしれない。

ケージ以降の実験音楽は「音楽」を変質・解体・限定することで〈音楽ではない音の芸術〉としての「サウンド・アート」を準備した、という僕の博士論文(2007)の主張(仮説)を思い出した。僕はこの博士論文の不備を補うために、音響メディア史を勉強したのかもしれない。



具体例への言及がたくさんあって、魅力的。
僕がサウンド・アートに関する単著を書く前に翻訳しても良いのかもしれない。
ただ、この人の本職は哲学らしく(?)、ニーチェ、ショーペンハウアー、ドゥルーズ、ホワイトヘッド…への参照がものすごく多い。必要なんだろうか?
あと、そもそもSonic Fluxって、なんて訳せるのだろう。
いや、もちろん、誰かやってくれるなら、それが一番ありがたいです。

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