2020-07-10

メモ:遠隔授業のやり方(2020年度前期の場合)


1 はじめに


* 遠隔授業のやり方をまとめておく。いつかまたやることになった時に参考になるだろうし、誰かの役に立つかもしれないし、まとめてみたら自分のやり方を改善するきっかけになるだろうし。

* まずお断りしておくこととして、録画録音を配信するオンデマンド方式については、避けたし今後も避けたいので全く分からない。また、人によって色んなやり方があるだろうけど、多くの人にとって便利なこと/モノとして、学生に語りかける際には相づち係を指名すること、オープンエアのヘッドセットを使うこと、をお勧めしたい。

2 準備の頃に考えていたこと


4月頃にいきなり「遠隔授業すべし」ということになり「やってられるか」と思って約20年ぶりに金髪にした。気分転換になった。

* 「遠隔授業」については既に法令でかなり細かく決められていることを知った。いろいろ細かいことまでしっかりと決められているんだな、ということと、こうやって「大学行政」は「大学」を(良くも悪くも)「縛る」のだな、と思った。

「遠隔授業」は「対面授業」とは異なるメディアで行われるコミュニケーションなので、「対面授業の代替物の提供」を目指さないことを心がけることにした。

* なので、〈自分の講義を録音録画して配信するオンデマンド方式〉は、絶対にやらない!と決めた。

目的を〈学生を刺激すること〉に絞ることにした。というか、そもそも「講義」とは〈学生を刺激する時間〉なのだ、と考えることにした。

* ただし、以下のようなやり方が可能なのは、担当授業の学生数がせいぜい30-40名の時だけ、という気もする。50超えるとしんどいし、3桁超えると無理。

3 授業の設計



3.1 前提1



* 大学が認める授業ツールとしてzoomとMicrosoft teamsと授業支援システム(LMS)があった。4月に試した段階ではTeamsは僕の環境では音と映像の遅延がひどくて使い物にならなかったので、zoomを使うことにした(今はどうなんだろう。使っていないので分からないが)。ゼミの学生と何度か試しているうちに、zoomに「ブレイクアウトルーム」という機能があることを知った。

3.2 前提2


* 前期の授業には「教科書」があった。ナカニシヤで作った『音響メディア史』である。

3.3 方法


* なので、〈毎回、教科書を1章ずつ確認する〉、〈毎回、ブレイクアウトルームを行い学生相互でミーティングした後に簡単な授業内レポートを作成してもらう〉というやり方でいくことに決めた。

* 遠隔授業でブレイクアウトルームをやると、〈日常的に大学に行かず友だちとお喋りできない学生の「お話ししたい欲」も満たせるのではないか〉と思ったが、これはさほど上手くいかなかったような気もする。よく分からないが。


3.4 語学の授業の方法



* 僕は英語の授業も担当している。

* こちらは逆に、使おうと思っていた教科書は辞めて、作文と学生同士のグループワーク中心で運営することにした。日本語作文と英語作文の宿題に授業中に学生同士でコメントを付け合う、という仕組みは、対面授業の時にやっていた形式だが、これは、ZoomのブレイクアウトルームとLMS経由で行うほうが便利ではある。

3.5 諸々の連絡


* メールよりもLMSよりもTeamsよりもZoomのチャットよりもSlack


4 各回の進行




4.1 相づち係



* できるだけ僕が話す「講義」はしないようにしたいが、どうしても多少は話さなければいけない。その際、誰の顔も見ずに誰の反応もうかがえない状態で自分の不安に任せて独り言を言い続けていると、話し過ぎるし疲れる。ので、毎回必ず「相づち係」を指名して、話し相手になってもらうことにした。

これは(僕にとって)良かった。

* ただし、毎回、相づち係の学生と雑談してしまう。大いに反省。


4.2 概略



* 前回の授業内レポートに簡単にコメントし、今回の内容について学生と話しながら概観し、教科書の各章の最後にあるディスカッション課題を少しアレンジして出す。理想としては45分経過したらブレイクアウトルームを始める。授業終了10分前にブレイクアウトルームを終え、次回のために指示をする。

* ただし、けっこう毎回、〈今回の内容の概観〉で時間を使ってしまう。反省。


4.3 ブレイクアウトルーム中



* 何か質問があれば対応できるようにパソコンの前に待機しながら、何か仕事する。一度だけブレイクアウトルーム中の学生のグループ全部に参加してみたが、とくに雑談とかもできないので、それ以降はしていない。


*

4.4 終わり方



終わるときに、ただ〈ミーティングを終了する〉のは突然過ぎるので、毎回、「今週のお別れの歌」を再生している間に学生に抜けて行ってもらうことにしている。週に一曲、授業の終わりごとに必ず聴く歌が僕にはあるわけである。


* 今のところ以下のようなリスト


Katchanが歌うWhat a wonderful world
二村定一が歌うMy Blue Heaven (私の青空) 
戸川純《好き好き大好き》(1985)
大工哲弘の歌う《美しき天然》
THE人生ズ《山》
坂本九《ステキなタイミング》
sakana《ジークコール》
ベートルズ《ごめんなさい》
バートン・クレーン《家へかえりたい》

5 機材


5.1 ヘッドセット


* ハウリング防止のために使うのは当然。

* ちょうど手元に開放型のヘッドセットがあった。これがとても良かった。ヘッドセットの外の音も聞こえると耳に負担も少なく、変に大声にもならず、疲れない。

5.2 WebCam


* 最初、Mac用のWebCamをいちいち隣の部屋から持ってきていたが、そのうち面倒くさくなってきたので、しばらく、Mac miniとiPhoneと両方からzoomにログインしていたが、こちらも面倒になってきた。6月にやっと自分のMac専用のWebCamを手に入れた。が、その頃には自分の顔はあまり映さなくなっていた。

5.3 iPad Pro + Apple pencil


* zoomでiPad Proの画面を共有してApple Pencilを使えば、自分の書いたものを見せることができる。これはゼミやスタジオの学生発表で、レジュメに入れた僕のメモを共有しながら説明するのに役立った。ホワイトボード的な機能も果たす。

6 現状


* あと数回。みんなどう感じているのだろう。

* 「仕方ない」時期なので「仕方ない」のだけど、何かが僕と学生の記憶の隅に残れば良いかな。

7 今後の課題


* 今後というか、下手すれば、後期。まだ何も決まっていないけど。

* 教科書ありきの授業方法なので、教科書がない場合、授業の時間とは別物としての〈学習活動の機会と方法〉を学生に提供するやり方を考える必要があるような気がしている。

秋学期も遠隔授業の場合、このやり方ではできない。履修人数は少ないけど〈大量の視聴覚資料を見聞きさせる〉というタイプの授業をどうすべきか、まだ良いアイデアは浮かばない。

* 〈講義の録音録画の配布〉はやりたくないので、〈各回の授業内容を毎回4000字程度にまとめて、Googleドキュメントで共有して、学生にはそこに注や修正提案や質問を書き込んでもらう〉といったことを考えている。が、まだ内容を詰められない。

* 後期の英語は「演習」で、今までは、〈アメリカのポピュラー音楽史の教科書の輪読と学生プレゼンテーションとグループワークとしての訳文提出〉をやっていたのだけど、どうしたものか。

いちおうコメントカードに目を通すので、人数が無茶苦茶増えると対応できない。

* 実は集中講義はもっと大人数だったのだけど、六月ごろに、八月の集中講義に向けた準備をしたくて「集中講義の方法」について問い合わせしていたら、〈別の人に頼みます〉ということになった。

* 「サウンドスタディーズ」の教科書を作りたい。2万字くらいで教科書のための文章を書いてくれる人をリストアップしてみた。もう少し企画をねってみよう。

* 授業の前も授業の最中も授業の終わった後も家にいる。飽きてきた。

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