2025-07-14

3月に参加したAudible Futuresのproceedingsが公開されました。

3月の年度末に参加して大変刺激的だったsound studiesの学会のproceedingsが公開されました。17名分ということは3分の2程度の参加者の人が寄稿しています。
学会発表のproceedingsって、今まで、発表用に作成した原稿を読みやすく整形して提出するものしか経験してこなかったけど、今回はフォーマットが決まっていて、「Background, Aims, Methods, Implications」という4つのセクションに構造化してkeywordsとreferencesも付ける、という形式でした。こういうやり方もあるんだあ、と思いました。
International Conference on Politics of Sound and Technology 2025 – 한양대학교 음악연구소 https://mrc.hanyang.ac.kr/audible-futures/

書誌情報はこちら。(なんか変な書き方な気もしますが)
NAKAGAWA Katsushi. 2025. "What Happened to Environmental Music in 1980s Japan When It Was Reevaluated as Kankyō Ongaku in the 2010s?" In: Chung, Kyung-Young (Music Research Center, Hanyang University), ed. 2025. Proceedings of Audible Futures: Media, Ecology, and Art. Seoul, South Korea: SORIZIUM. https://mrc.hanyang.ac.kr/wp-content/uploads/audible-futures-proceedings.pdf.: pp.97-101.


僕は国際学会で発表する際には、ずっと、1980年代日本の環境音楽と2010年代のKankyō Ongakuのことを考え続けてきたのですが、問題をけっこう整理できてきたし、今年から来年にかけて何度かこの主題について論文と発表とでまとめる機会があるし、そろそろ取りまとめます(と宣言してみます)。
来年度にコペンハーゲンで発表したら、きっちりと査読誌に投稿できる準備が整うのではないだろうか。

2025-07-04

メモ:中島みゆきはVocaloidより凄いかもしれない

2025年4月19日放送の「新プロジェクトX~挑戦者たち~ 情熱の連鎖が生んだ音楽革命 ~初音ミク 誕生秘話~ 」を、NHKオンデマンドでやっと見た。初音ミク現象について、多方面に触れていて良いドキュメンタリーだったし、最終的には中島みゆきの偉大さに想いが至るドキュメンタリーだった。
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025145869SA000/? 


最近、大学院生とNina Sun Eidsheim, The Race of Sound, 2019 (Open Access: https://library.oapen.org/handle/20.500.12657/22281) を読んでいて、ch4ではヴォーカロイド文化が取り上げられていた。そこでは、Vocaloid技術を用いたLEONとLORAという奴らが先にデビューしていたが、それらはキャラクター化されておらず、ソウル・ミュージックのバックシンガーとして使われるシンセサイザー音源の一種として、販売された。が、ソウル・ミュージックで使われた事例は全くなく、ただし、ファンたちが自由に勝手にキャラクターをつけて盛り上がったりしていた、ということが語られていた。で、その後、初音ミクが爆発的に普及したのだ、というお話だった。

このドキュメンタリーでは、初音ミクの前にMEIKOがいたことには触れられていたけど、LEONとLOLAのことには全く触れられていなかった。
 Eidsheim 2019では「初音ミクはLEONとLOLAに影響された」とは明言されていなかったので、直接的あるいは事実として、初音ミクとLEONとLORAは、あまり関係ないのかもしれない。どうなのか。

NinaさんはLEONとLORAの役割を過大評価しようとしているとか、プロジェクトXは初音ミクの役割を過大評価しようとしている(ので先駆者の存在を無視している)とか、そういうことはどうでも良いのだが、事実としてはどうだったんだろう。


突然COMPOSTELLAが流れて、びっくりした。一聴して分かる。初音ミクの成功に向けて活躍した一人が、音楽好きであることを示すために再生された事例として、再生された。

初音ミクに関するプロジェクトXの番組でも、やはり、中島みゆきの地上の星が流れるのであって、初音ミクに歌わせたりはしないんだな、と思った。ヴォーカロイドの曲を人間が歌うようになった例としてAdoを紹介する際に、Adoの歌声と中島みゆきの「ヘッドラーイトー」という歌声が交差したり、中島みゆきだけになったり、という場面で終わった。 その最後のところがすごかった…! 
(プロジェクトXって初めて見たかもしれん。なんか、すごいフォーマットやな…。)