2014年8月21日木曜日

8月17日−20日台湾、林其蔚(Lin Chiwei)、『造音翻土』、noise kitchenなど

8月17日−20日に台湾に遊びに行った。
月曜日に美術館に行こうとするという大失態を演じたにもかかわらず――僕はもともとお目当ての行き先が定休日の日にそこに行ってしまうことが多いので、念には念を入れて妻が美術館の休みの日を確認し、台湾では美術館のお休みは火曜日らしいと言ったので、それは珍しいなあと思ったけど、だったら月曜日に高雄泊で大丈夫だと思ったが、その月曜日の朝、高雄美術館に行こうとウェブサイトを確認したら、やっぱり月曜日は休みであることが判明した。とはいえ、旅行中は常に動き続けなければいけないものだという信念のもと、スケジュール通りその日は台北に向かい、翌火曜日に台北から日帰りで高雄にもう一度行ったのだった。何度でも胸に刻もう。世界的に、基本的に、美術館は月曜休館なのである!――、目的通り高雄美術館で「造音翻土-戦後台湾サウンドカルチャーの探索」を見て、林其蔚(Lin Chiwei)さんともゆっくり話して、noise kitchenも見に行けた。台北ファブラボにも行った。「台湾のあんだーぐらんどな音楽シーン」を見に行けなかったのが残念だけど、初台湾旅行はなかなかステキな観光旅行だったと言えるのではなかろうか。
ということで、以下は観光旅行的な話以外のメモ。
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林其蔚(Lin Chiwei)さんとの会話

Facebookでの記録:中川 克志 - I had an talk with Lin Chiwei last night and had a good...:
Chiweiさんも忙しかったみたいだしうまく会えるかどうか分からなかったけど、2,3時間ほど色々と話せて良かった。まず第一に、僕は彼を『超越聲音藝術-前衛主義、聲音機器、聽覺現代性』(藝術家出版社、2012年)の著者として知ったので、何らかの研究者兼アーティストではないかと思っていたのだけど、研究者とかでは全くなくて、アーティストが本業のようだった。講演とか行うこともあるけど、その際も必ず何かのパフォーマンスを行うらしい。
Chiweiさんは90年代の学生運動をきっかけにノイズ音楽を作り始め、それ以来ずっとアーティストだそうです。フランス文学を専攻して3年ほどフランスに留学したそうです。90年代はオーガナイザーとしてとても有名だったらしい。そういうことと関係があるのかどうか知らないけど、「造音翻土-戰後台灣聲響文化的探索」のキュレイターのひとり(Amy Cheng)は、Chiweiの仏文の同級生らしい。なぜか今はpaintingをしているらしい。

半月ほどたって一番残っている会話の内容は、「台湾の”聲音藝術”はsound artという意味とイコールではないし、台湾の”聲音藝術”の歴史や意義について考えるためには、その文脈(の有無)に関する考察が必要不可欠だ」、ということ。
12月末のLacking Sound Festivalに出演するかもしれないらしいので、それに行きたいなあ。

参考:

超越聲音藝術林其蔚新書發表會


超越聲音藝術林其蔚新書發表會 - 現場表演DINO



◯高雄市立美術館で「造音翻土-戰後台灣聲響文化的探索(ALTERing NATIVism -- Sound Cultures in Post-War Taiwan)」展

Facebookでの記録:中川 克志 - 高雄市立美術館で『造音翻士 Sound Cultures in Post-war Taiwan』を見て来ました。...:
今回の台湾旅行の主目的。このウェブ記事を見て知った。「造音翻土-戦後台湾サウンドカルチャーの探索(台湾在住の岩切澪さんという方のレポート)(この方、ノンさんの大学の時の同級生らしいけど、京都精華の佐藤さんとかジョンとFacebookの友だちになってる。どういうつながりなんだろう)。そんな大規模な展示ではなかったけど、「台湾の聴覚文化の歴史」の叩き台(のようなもの)としては、偏向していることもはっきり分かるし(つまり後から修正しやすいし)、20世紀以降の台湾史における聴覚文化を5つの領域に区分して紹介する面白い展示だった。この展覧会のために36ページの小冊子が制作されていたが、図録は作られていないので、展示物の詳細を後から確認することができない。
展示は5つ領域に分けられていた。

I. Governance and Gaps
:日本植民地化の「台湾音楽の発掘」について知った。黒沢隆朝という音楽学者が台湾の高砂族の音楽を調べあげたらしい。

II. Sound Excavation
:70年代にChen Da(陳達、チェン・ダー)というfolksingerが登場したらしい。

III. Alter-native Sound
:70年代、80年代とフォークソングのブームがあったらしい。90年代には社会運動に関心の強いバンドが登場したらしい。ここで展示されていた「90年代の台湾のインディーズバンド」はno waveな音が多くて僕好みだった。カッコ良かった。

IV. Alter-native Flight
:IVとVでは「いわゆる普通の音響文化」に関する記述がなくなる。
:90年代には最初のノイズ・ムーヴメントが生じた。きっかけは1990年3月16日に発生し3月22日に終結した学生運動、三月運動(Wild Lily student movement)らしい。林其蔚(Lin Chiwei)も、この学生運動で座り込んでいる時に初めて、仲間の前でノイズ・パフォーマンスをやったらしい。
:なので、林其蔚(Lin Chiwei)が仲間とやっていた零與聲音解放組織Zero and Sound Liberation Organization)や、Chiweiさんがオーガナイズした台北縣後工業藝術祭(Taipei Broken Life Festival)の映像が流れていた。なんというか、アングラ芸人とノイズ芸人がたくさん出演するビックリショー、みたいな感じだった。映像ではお客さんがものすごくたくさんいたように見えた。

V. Alter-native Art
:「90年代のノイズから今日のサウンド・アートまで、sound makersは、マーケットのメカニズムに取り込まれずに音を作るにはどうすべきか、という問題に直面することになった」らしいので、この展覧会におけるsound makersは、けっこう狭い範囲のひとのことらしい。レイヴ・パーティーのチラシなども展示されていたのだが…。
:台湾では2002年以降「sound art」という言葉を使い始めたらしい(どこで使い始めたかという言及は、なし)。
:ここではEtat Lab, Lacking Sound Festival, Kandala Communeという三つのグループと、Huang Dawang というアーティストの作品が展示されていた

この展覧会の提示する「歴史」が「偏っている」という印象を受けるのは、そもそもこの展覧会の企画の意図は、台湾の音響文化一般の目録作成や台湾のポピュラー音楽の歴史を辿ることではなく、「社会に対する知覚の中核を構成するものとして、そして、既存の秩序について考察したり抵抗したりするための文化的運動の基盤として、音を提示すること」だったかららしい。で、こういう発想は、音楽はやsound makingは社会の未来のあり方を予見する、というJ・アタリの『ノイズ』にヒントを得たものらしい。
アタリにヒントを得るとこうなるだろうということは分かるけど、「音響文化の目録作成」をしない理由と、台湾のポピュラー音楽の一部を恣意的に無視する理由が分からない。台湾のポピュラー文化の一部には言及し、その政治的・文化的・歴史的背景を説明・解釈していたのだから。
この展覧会で再構成された「歴史」は(もちろん)企画者の歴史観に制限されているものだけど、それがどれくらい制限されたものか知るために、台湾の近現代史を勉強しないとなあ、と思った。

この展覧会の主眼は、alternateなnativismを提示すること、にあるらしい。なので、5つの領域において、現在通用しているnativismなsound cultureに対するオルタナティヴを提示してみた、というのがこの展示らしい。とはいえ、台湾における「普通の音響文化」がどんなものか分からないので、「らしい」としか判断できない。
展覧会のタイトルの一部でもある「翻土」の英訳は「excavating」らしい。つまり「1 〈埋もれたもの〉を掘り出す, 掘り起こす; 〘考古〙…を発掘する. 2 〈穴など〉を掘る, 掘って作る; 〈地面など〉に穴を掘る, …を切り開く.」の動名詞。これには2つの意味があるらしく、第一にこの展覧会が台湾のsound makingの歴史を発掘していること、第二にlocal cultureを発掘することで台湾固有の新しい文化を生み出そうという意図が展覧会にあること、という意味があるらしい。その成否は僕には判断できないが、だから、音響文化の歴史の紹介と一緒に、現代のサウンド・アートの作品展示もあったのだな。あくまでも「新しいもの」を生み出すことを企図する展覧会だったのだなあ。

ということで、全般的には、展示を楽しみました。また、もっと台湾のことを知ろう、と思いました。

この展覧会の一人、Amy Cheng(Chiweiさんの同級生)さんが何人かの仲間と一緒に台湾内外の現代アーティストの個展やグループ展、トーク、イベントなどを企画するTheCube立方計劃空間という小さなアートスペースがあるらしい。次は行ってみよう。

◯noise kitchen

Facebookでの記録:中川 克志 - noise kitchenに来ました。7,8個程度のサウンドアート作品があるカフェで、楽しい場所だった。...:
20分しかいられなかったけど、楽しかった。
小さいお店だし、モッチーにしてもらった報告(I am alive.: 音を鳴らして遊べるサウンド・アート・カフェ@台北Noise Kitchenのレポート by もっちー:)でもうバッチリな気がする。

参考:
Changee 噪咖





このマスターの方が、8月にあった時はこの映像よりもう少し太っていて、セクシーキラーを彷彿とさせた。

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