2020-02-21

分子運動の音楽について

分子の振動といえば、ジョン・ケージが「灰皿」について述べた言葉が有名。
「この灰皿をみてください。これは振動状態にあります。私たちはそのことを分かっていますし、物理学者は証明することができます。しかし私たちはその振動を聞くことはできません。無響室に入った時、私は自分(が発する音響)を聴くことができました。だから今度は、自分(が発する音響)を聴く代わりに、この灰皿を聴きたいのです。しかし私は、打楽器にするように灰皿を叩くつもりはありません。私は灰皿に内在する生を聴こうとするのです。そのために私は、そのために設計されたのではないでしょうが、適切なテクノロジーの助けを借りるのです。」(Cage, For the Birdsより)

そして、まさに分子の運動を音/音楽に変換した事例としてPeter Weibelが紹介するのが、Thierry Delatourというひとの事例。

なぜこんな音色になるのか分からないが。
P. Weibelは2013年にMolecular Aestheticsという展覧会をしているし、T. DelatourさんにMolecular Songsというインスタレーション作品を作ってもらっているようだ。
(典拠:Weibel, Peter. 2019. “Sound as a medium of Art.” in Sound Art: Sound as a Medium of Art. MIT/ZKM Karlsruhe. 2019: 134.)

ググってみてもThierry Delatourという人の情報は出てこない。が、「分子運動 音楽」と検索すると、別の人名が出てきた。

分子の音 身体のなかのシンフォニー | 毎日新聞出版


どうやら、分子運動から音・音楽を生成するというのは、アート業界以外の場所でも話題になったことのようだ。


というか、00年代前半にnano biotechnologyという領域で「cellular sounds」という技術(???)が開発されたようだ!
The Dark Side of the Cell by Anne Niemetz and Andrew Pelling:ウェブサイト



2020-02-19

メモ:Channa Horwitzというヴィジュアル・アーティストのSonakinatographyという方法論

Channa Horwitzというヴィジュアル・アーティストのSonakinatographyという方法論があるらしい。
(典拠はWeibel, Peter. 2019. “Sound as a medium of Art.” in Sound Art: Sound as a Medium of Art. MIT/ZKM Karlsruhe. 2019: 123.)
説明は短くて詳しくは分からないが、時間、リズム、空間、動きなどを視覚化する方法論らしいが…。


Channa Horwitz, Sonakinatography Movement #II Sheet B 1st Variation, 1969

https://zkm.de/en/media/video/moments-talk-with-channa-horwitz


Channa Horwitz, 'Sonakinatography, Composition III', with music by Sarah Angliss and choreography by Ellen Davis, 2016 from Raven Row on Vimeo.
Channa Horwitz, ‘Sonakinatography, Composition III’, with music by Sarah Angliss and choreography by Ellen Davis, 2016

メモ:Musikalische Graphik

図形楽譜とは逆に、音楽を目指す絵画のこと。

言葉の起源は1925年の本らしい。internet archiveには見つからず。
参考:Oskar Rainer, Musikalische Graphik: Studien und Versuche uber die Wechselbeziehungen zwischen Ton- und Farbharmonien. 1925. という本が「musical graphics」という言葉の起源らしい。


古書は5000円くらい?


国内でこれに言及しているものは一件しか見つけられず。
臼井奈緒、仁志高見 2018 「ドイツにおける絵譜の研究諸相 : 音楽と絵を融合させた童謡集Liederfibelを手がかりに」 佛教大学教育学部学会紀要:17: 63–74。

典拠はWeibel, Peter. 2019. “Sound as a medium of Art.” in Sound Art: Sound as a Medium of Art. MIT/ZKM Karlsruhe. 2019: 120.

2020-02-18

Musicalismeについて

Weibel, Peter. 2019. “Sound as a medium of Art.” in Sound Art: Sound as a Medium of Art. MIT/ZKM Karlsruhe. 2019: 12-147: 106より
”Seeing Sound”という節で、たくさんの固有名詞が列挙される中で、「musicalistes (a group of artists who called for the musicalization of art)」というものも挙げられていた。
Henry Valensiという画家が、Charles Blanc-Gatti, Gustave Bourgogne, Vittorio Straquadainiといった画家たちとともに、1932年に始めたものらしい。
が、英語の情報がほぼない。
英語版Wikipediaにも項目がないので、フランス語版のWikipediaの項目をグーグルで英語に翻訳しないといけない。

見つけられたのは、Henri Varensiのためのウェブサイトのこれだけ。
1930年代の動向なんだなあ!


2020-02-08

メモ:2020年02月08日佐藤郁哉『大学改革の迷走』

読めば読むほど、どうしようもないじゃねえか、と思った。
毎年1%ずつ予算が削減されていく結果として、後任人事がほぼ凍結され、今後も同じ職場に自分の同僚が来る予想はできないし、今後も研究教育のための状況が改善しそうな予想はまったくないのだけど、どのような過程でこうなってきたのか、を記述分析してあった。
審議会はテキトーで「審議」していないとか、「高等教育財政の充実」や「公的支出を欧米諸国並みに近づけていく」とかは30年近くに渡って言われてきたとか、文科省は「集団無責任体制」であることとか、大学当局は「経営ごっこ」と「改革ごっこ」をしていて面従腹背したり過剰同調したりして問題を先送りしているだけだとか。何らかの社会的状況を〈英雄、悪漢、バカ〉の3つの役割で記述することでひとは社会を物語化していくこと、は理解できる。〈アメリカの大学〉はすごいから、〈既存の日本の大学と大学人〉というバカはそこを目指すべき等々。
さすが『暴走族のエスノグラフィー』のエスノグラファー。でも、読めば読むほど、どうしようもないじゃねえか、と思った。