2015-08-09

文京洙『韓国現代史』(岩波新書、2005年)

韓国からの留学生のゼミ生に対応するために、また、「アジア圏におけるサウンド・アートの展開」を研究テーマとしているので、韓国の現代史を勉強するために読んだ。
勉強になった。

驚くほど最近まで(1990年代か2000年代まで)、第二次世界大戦後の冷戦構造の影響下で維持されてきた”独裁体制に近い大統領制”だったようだ(たぶん)。
”戦後数十年間は驚くほど非民主的だった国が少しずつでも民主化されてきた物語”として読めてしまったので、”今後しばらく民主主義が失われ続けるだろう日本もそのうちまた過ごしやすい良い国に戻るかもしれない希望の物語”に見えなくもなかった。
資本主義とか競争主義を全面肯定すれば「国全体」は富むけれど、格差は拡大するし民主主義は邪魔なだけだ、というのは、シンガポールを見ても明らかなのになあ、とか思いました。

韓国のサウンド・アートの文脈について言えそうなこととして、日本では80年代に「サウンド・アート」が流通する際に「美術館教育」などの文脈を経由することが多かったようだけど、韓国ではそういうことはまずなさそうだなあ、と思いました。
とはいえそもそもその前に、「韓国のサウンド・アート」なるものがあるのかどうか、ということから調べなければいけない。

まあ、もっと勉強します。

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目次はここにあるもの

■目次
はじめに
序章  
朝鮮史における中心と周縁 
1 韓国の“地域葛藤”
 六月民主抗争――民主化の原点/湖南差別

2 朝鮮王朝時代の中心と辺境

 高麗太祖・王建の遺訓――湖南差別の原点?/「朝鮮八道」/近世東アジアの国際システムと「小中華思想」

3 済州島――ソウルと対極の地

 耽羅王国/済州島をめぐる「オリエンタリズム」/抵抗の伝統

4 植民地期のソウル・湖南・済州

 封建王都の黄昏/植民地近代化と湖南財閥/他者認識の諸相
  
第1章 
傷ついた“解放” 
1 人民委員会と米軍政
 下からの革命/特異な解放空間/南の人民委員会/人民委員会の各地での盛衰

2 一〇月人民抗争
 信託統治/北朝鮮の民主改革/朴憲永の新戦術/一〇月抗争とその帰結

3 済州島四・三事件
 済州島の人民委員会/三・一節事件/四・三事件の経緯/麗順(麗水・順天)反乱/四・三事件の遺したもの

4 朝鮮戦争と湖南の周縁化

 開戦までの状況/朝鮮戦争下の虐殺・テロ/戦争と社会/抜粋改憲と四捨五入改憲/湖南の周縁化
  
第2章
軍事政権の時代と光州事件 
1 四・一九学生革命
 分断体制の展開/アメリカのコミット/四月学生革命/短命な第二共和国

2 朴正熙とその時代
 五・一六クーデター/朴正熙とは/アメリカの「二つの戦線での闘い」/第三共和国――強い国家をめざして/輸出指向工業化/ベトナム戦争/日韓条約/南北共同声明と維新体制/捏造された人革党事件/重化学工業化――漢江の奇跡

3 変貌する韓国社会と地域感情

 「慶尚道天下」――成長の嶺南、停滞の湖南/ソウルの変貌/政治に利用された地域感情

4 光州事件
 きしむ韓米関係/YH貿易事件/金載圭の凶行(朴正熙射殺)/ソウルの春/抵抗の都市・光州/自治共同体と最後の炎
  
第3章
分断を超えて――民主化と南北和解 
1 六月民主抗争
 新軍部政権の成立/侍女となった言論/新冷戦から新共存へ/社会運動の転換/蘇る社会運動/主思派とPD/六月民主抗争/第六共和国憲法

2 地域主義の時代
 第十三代国会議員選挙/市民社会の諸組織・運動/済――レッド・コンプレックスを超えて/三党合同――少数与党から巨大与党へ

3 九〇年代の韓国――「文民政府」から「国民の政府」へ

 文民改革/核疑惑と逆コース/「世界化」の罠/金大中の薄氷の勝利/構造調整――金融危機の克服/金大中改革の光と影/太陽政策

4 盧武鉉の挑戦
 空洞化する民主主義/保守支配の三大要素/落薦・落選運動/盧風/気まぐれなネティズン 
  
終章
過去へ、未来へ 
1 過去への眼差し――周縁の復権
 五・一八特別法/四・三特別法への道/過去史法の成立/反面教師

2 e-politicsは未来を切り開くか

 インターネット先進国/大統領弾劾とネティズン/オンライン選挙/国会の刷新/周縁の行方 
  
あとがき
  参考文献
  略年表
  索引



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