2024-06-10

メモ:映画『関心領域』(2024)

 Mark Isにできた新しい映画館で『関心領域』を見た。演出における音響効果の使用が多いとのことだったので、是非とも映画館で見なければと思ってみに行った。新しい映画館は座席からも音が再生されるらしく、それが良いか悪いかは映画によると思うけど、映画の音響効果の使い方の意図は分かりやすかった気がする。

物語としてはえらく単純で地味な筋で、「何も起こらない」と言っても過言ではないが、最後の現在と交錯する映像や画面全体が赤色に染まる演出などは面白かった。アニメーション映画『戦場でワルツを』(2008)の最後のシーンを思い出すなど。

このヘス所長の邸宅が収容所の隣にあったって、実話なの???

あと、あのリンゴの少女はなんだったんだろう?(→こういう記事が出てきたけど:実話だった!『関心領域』リンゴを置く少女の演出をネタバレありで考察 | タビシネマ

音響効果は、「普通なら消される背景音」が消去されずに残っていること、が面白かった。「普通なら消される背景音」が消去されずに残っているので、視聴者は少し違和感を感じるのだけど、その背景音は物語の筋とは無関係なので、視聴者も無視しながら聞くようになる(あるいは、違和感を感じつつ「とりあえず」は無視するようになる)、という仕掛けがポイントだった。

2024-06-09

メモ:松本清張『ゼロの焦点』


僕の指導学生じゃないけど大学院生が研究で扱ってるし、寝る前に読んでいると数分後に眠くなるのでちょうど良い寝る前読書として、読んだ。

東京から金沢まで夜行列車で一泊かかるとか、ところ構わずタバコを吸うとか、人とお話をするために旅館の部屋を借りるのが当たり前とか、色々な文化風俗が違うので、そういうのに引っかかりつつ読んだ。

『砂の器』でも思ったけど、設定に無理があるけれど叙述の蓄積でなんとなく不自然さが醸し出されないように物語を展開していくのが松本清張なんだなあ、と再認識。とはいえ、結構強引なお話ではあるよな、とは思う。偽名での二重生活のディティルの説明が怪しすぎないか。基本的には、主人公のモノローグあるいは思い込みに過ぎないことも多いわけで、だからといって、私小説的な技巧が凝らされているわけでもないし。

ともあれ、ここで描かれるのは、戦後13年の段階におけるパンパンへの同情的な視線、だった。ただし、パンパン全員ではなく、両家の生まれ育ちでやむを得ない事情でパンパンになったがそこからなんとか抜け出せた人限定、だった。


これを2020年代の日本で語り直すことの意味は何だろうか。1950年代後半の日本における女性表象の一事例、程度ではないのか? という疑問をメモしておこう。

2024-06-07

『週間読書人』に『コンサートホール×オーケストラ 理想の響きをもとめて』の書評を書きました

 本日(2024年6月7日)発行の『週間読書人』に、豊田泰久(語り手)、林田直樹(聞き手)、潮博恵(解説)『コンサートホール×オーケストラ 理想の響きをもとめて』(アルテスパブリッシング、2024年)(https://artespublishing.com/shop/books/86559-289-4/
)の書評を寄稿しました。僕のクラシック音楽への造詣はとても浅いですが、豊田泰久さんのお話は面白いです。『鳥になった少年』や『文化系のためのヒップホップ入門』のように面白い。石合力『響きをみがく――音響設計家 豊田泰久の仕事』(朝日新聞出版、2021年)も良かった。
週刊読書人 - 6月7日号、本日刷り上がりました! 巻頭特集:対談=宮﨑裕助・土田知則 <デリダとド・マンの「読むこと」を問う>... | Facebook https://www.facebook.com/dokushojin/posts/pfbid02ULfRgXNYTXj94tPrqp3mvyXpeoVe6CnMWdtoqSRbkqbLLh4aHdNZ892LHs2onXmgl