2014-06-29

フィリップ・K. ディック『死の迷路』

土曜日の午後にするには楽しい気分転換となる良い読書体験でした。
ディックの魅力は小道具の面白さ(何でも複製する変な動物とか)と登場人物のくだらなさ(ほとんどが反省も成長もしないダメ人間)と物語の筋のB級さ(伏線がきちんとすべて回収されないなど)であることを再確認できた。

山形浩生の訳者解説が痛快痛烈。
ネオ・プラトニズムの考え方として形相と質量の区別を簡単明快に説明した後。
「で、なぜそんな考え方をするのか、という疑問は当然おありだろう。平たく言ってしまえば、こういうことを考える連中が暇だからで、さらにこういうクソの役にもたたない妄想に日々ふけっているだけで飯が喰えるという、しあわせな階級の存在を許容できるほど、当時の(そして今の)社会が豊かだったからである。現実に生きるにあたって、こんな考え方をしてみたところでいささかも役にたつわけではない。それでもなお仔細を知りたい暇な方のために説明しようかとも思ったが、あいにく紙数が尽きた。」(訳者解説:303)

死の迷路 (創元推理文庫)
フィリップ・K. ディック 山形 浩生
4488696031

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