2015-09-24

キム・ジュンヒョク『楽器たちの図書館』2011年

新しい韓国の文学シリーズのふたつめ。作者は1971年生まれ。
固有名詞があまりないので、初期の村上春樹みたい。何語にも翻訳できそう。

韓国文学を長年観察してきた訳者のようなひとから見れば、ある種の感慨を覚えるらしい。つまり、植民地文学でも社会参与の文学でもない「オタク」の文学が登場したのか、と(ただし、固有名詞がほとんど登場しないままに「DJ」とか「リミックス」といった言葉が使われる物語は、まったく物足りない)。
韓国文学という文脈を超えた力は、僕には感じられなかった。村上春樹でいいじゃねえか、と。

韓国にいる若者にとってはどうなんだろう。
この「透明」で、僕には薄っぺらく見える物語が、それなりに、自分たちの現実に潜むなんらかのリアリティをすくいあげているのだろうか。つまり、生活感情においては、政治も社会も興味ないし、アジア人としての自分たちが「外」からどう見られているかにもあまり興味ない、みたいな生活感情のリアリティを、すくいあげているのだろうか。


楽器たちの図書館 (新しい韓国の文学)
キム・ジュンヒョク 波田野節子
4904855043





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