2020-12-16

メモ:東浩紀『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』( (中公新書ラクレ、2020年)

語りおろしの本なのでサクサク読み進めたし、自分の過去の行動を理路整然と説明してしまう頭の良さに感嘆したり、(たぶんどこかでカッコつけて隠し事もしているのだろうけど)、かなり率直に自分の過ちを認めている語りなど、面白かった。
この人の政治的志向には反対だが、この本は良い本だった。
あと、やっている行動は、素晴らしいと言わざるを得ない。人文系大学人としての僕は、〈人文学的思考の場所を自分で確保するために行動する能力〉がないので、大学にしがみつきながら「大学」をよりよい場所にしていくために行動するぞ、と思うのだが、能力が卓越しているとこういう行動の仕方もあるのだな、と感心した。こんなに行動力がある人は今の日本の大学で(あるいは海外の大学でも)生きていくことは難しいだろう。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「けれど、それでも両方の側が、欠点だらけの試行錯誤の先駆者としてぼくを見てくれるのであれば、それこそがぼくがやりたかったことです。ひとの人生には失敗ぐらいしか後世に伝えるべきものはないのですから。」
「まえがきで、本書は批評の本でも哲学の本でもないと記した。読みとおしたみなさんならわかっていただけると思うが、本書はおそらく、既存のジャンルであれば私小説あるいは自伝にもっとも近い。」

0 件のコメント: