20世紀後半以降の音響彫刻の先駆者としては、バシェ、J.ティンゲリー、ロバート・モリス、ハリー・ベルトイアの四人をあげることが多い。しかし、この4人以外にも多くのアーティストが、1950-60年代にすでに音のある視覚美術作品を制作し始めていた。
Alan Licht, Sound Art Revisited. 2019では、1950-60年代に音のある視覚美術作品を制作していたアーティストとして、ステファン・フォン・ヒューン[Stephan von Huene, 1932-2000]、レン・ライ[Len Lye, 1901-1980]、タキス[Takis, 1925-2019]、ピーター・ヴォーゲル[Peter Vogel, 1937-2017](フェアライトCMIの開発者とは別人)、ヴァルター・ギールス[Walter Giers, 1937-2016]といった名前が言及される。それなりにまとまったウェブサイトがそれぞれ作られているので、〈それぞれの全体像〉を知るのは困難ではない。Takisは2019年に亡くなった時にちょうどTateで回顧展をやっていたし、全員、何らかの図録や論文で扱われている。日本語での情報は、ゼロではないが、少ない。
ただし、全員、必ずしも音にフォーカスした活動をずっとしていたわけではないので、〈それぞれの音のある芸術作品〉に関するまとまった情報を知るのは難しい。というか、それぞれ〈活動全体における音のある視覚美術作品の位置と意味〉を考える必要があるので、〈それぞれの音のある芸術作品〉についてだけ知ってもあまり意味はない。
彼らについて、まとまった形で言及されることはないが、少しずつでも良いから、資料を集めて勉強を進めていこう。何か見えてくるだろう。現段階での予想では、思っていたよりずいぶん前から美術館には音が侵入していたと再認識したり、「キネティック・アート」の重要性を再認識したり、するようになるのではないだろうか。
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レン・ライ[Len Lyre]について。
この人が1960年代からキネティック・スカルプチュアを制作していたことを見逃していた。UbuWebのツイートで彼の「Composing Motion: The Sound of Tangible Motion Sculpture」という音源を聞いて、面白かった。彼のキネティック・スカルプチュアがガンガン何かに当たるだけの音が録音されていたりするのだが、心地よい。たぶんこういうのかな?
面白かったので、いくつか調べてみた。
レン・ライの実験映像のDVDを見て以来、今までずっと、彼のことは実験映像作家としてしか認識していなかった。オスカー・フィッシンガーとかVエッゲリングみたいな〈音楽に憧れる視覚芸術〉のヴァリエーション、と考えていた。
しかし、確かにLicht 2019でも言及されている。ここではTakisと一緒に、二人で一段落で、言及されていた(今調べてみたら、この本のKindle版では紙版ページ数が表示されず…)。
ニュージーランドで生まれ育ったレン・ライは、ロンドンやニューヨークで活躍したが、作品の多くはニュージーランドにあるらしい。The Govett-Brewster Art Gallery / Len Lye Centreという場所にあるらしい。