2023-08-22

メモ:北雄介『街歩きと都市の様相』(京都大学学術出版会、2023年)

soundwalking について考えるヒントとして入手。活きの良い若手研究者の研究書で、野心がでかくて、刺激的だった。街歩きという体験の全体性を解明したいという志に感心。
自由記述分析の詳細は不勉強な僕にはよく理解できなかったのだけど、街歩きしながらその体験を記述してその全体性を分析するために色々と実験手法を工夫していくところに興味を惹かれた。地図をオノマトペで記述するという研究方法があるのだけど、それも単なる思いつきで「なんとなく面白そうだから」という理由しかないのではなく、都市の多様なレイヤーのいくつかに焦点を合わせたり体験の記述の焦点を絞ったりするために、という方法論的な裏付けのある選択である(と記述できる)のも素晴らしい。当たり前なのかもしれないが、そういう方法論的な準備がしっかりしているのが勉強になった。
横国の学内でsoundwalkingを企画してみたいと思っているので、ご指導してもらえないものか。どこかでお話できる機会ないかな。


ところで。
この人、僕に似ている気がする。この人のほうが若いし、ヒゲもスッキリ整えているけど。
そういう意味でも一回お会いしてみたい。

ということはつまり、僕たちはふたりとも、トンツカタンのあまり喋らない人に似ている、ということである。
トンツカタン 櫻田(@tontsuka_tasuku)さんの返信があるツイート / X https://twitter.com/tontsuka_tasuku/with_replies

2023-08-12

メモ: 市川沙央『ハンチバック』

Amazon.co.jp: ハンチバック (文春e-book) 電子書籍: 市川 沙央: Kindleストア 

強烈な短編小説だった。時折溢れ出る作者の攻撃的な心情が本当に素晴らしい。「攻撃的」と評して良いかどうかためらうところではあるが、自虐的ではない。

小説のなかで展開される虚構は、主人公である身体障害者(あるいは作者)が夢想する理想、幻想、あるいは悪夢なのかもしれず、現実と虚構の重ね合わせとズレは小説の醍醐味のひとつなので、もう少し明解あるいは重層的にはできなかったのかと思いもするが、他の重度障害者から色々な同意や反発を惹起するだろうと思えば、それはなかなか良いことなのかもしれない、と思ったり。

2023-08-02

メモ:エリオ・オイチシカ(Hélio Oiticica, 1937-1980)について

 今回のICA22 (2023)のWed 3:30 pm – 4:30 pmに、知り合ったミゲル(MIGUEL DUARTE)が発表したパネルでは、3人ともHélio Oiticicaというアーティストについて発表していた。


MIGUEL DUARTE | BRAZIL
After the End of Art History, is Time for Art Geography?: Helio Oiticica, Paulo Nazareth and the Geopolitics of Contemporary Art
MIGUEL GALLY (moderator) | BRAZIL UNB – University of Brasilia
Hélio Oiticica, Space, and the Collective Genius
PAULA BRAGA | BRAZIL UFABC – Federal University of ABC
Hélio Oiticica as a Brazilian Scene of Rancière’s Aesthetic Regime of Art

不勉強で知らなかったのだが、エリオ・オイチシカという人はブラジル現代アートにとってとても重要な存在。
Hélio Oiticica – Wikipédia, a enciclopédia livre https://pt.wikipedia.org/wiki/H%C3%A9lio_Oiticica

50年代に活動を始め60年代に世界的に有名になり1970年にはNYに移住したり。おそらく日本でも有名なのは、このひとの作品をきっかけに「Tropicalismo」運動が命名されたこと、ではないか。

カエターノは、1968年に発表したアルバム『アレグリア・アレグリア』(原題:Caetano Veloso)に、「Tropicália」という自作曲を収録。同曲は、撮影監督のルイス・カルロス・バヘットLuiz Carlos Barreto)が、エリオ・オイチシカHélio Oiticica)によるインスタレーション作品「Tropicália」に着想を得て、カエターノに進言したことからタイトルが決まり[1]、最終的にはムーヴメント自体を指す呼称となる。カエターノは、当時の自分にインスピレーションを与えた作品として、1967年公開の映画『狂乱の大地』(原題:Terra em Transe、監督:グラウベル・ローシャ)を挙げている[1]
とのこと。
Miguelから、ブラジルにはフルクサス第2世代しかいないんだとか、オイチシカはローリング・ストーンズを好きだったようだ、とか、Tropicáliaという音楽を知ってるか、とか聞いて、そのときにはなんだかあまり分からなかったのだけど、とりあえずApple Musicで「トロピカリア ベスト」というプレイリストを再生しています。


オイチシカに関する日本語のリソースを探したが、一般書レベルでは見つけられず。研究論文は多少あった(少ししかなかった)。
なので、とりあえず「居村匠」と「山野井千晶」と「飯沼洋子」いう名前を覚えておくべし。どなたも(たぶん)面識はないけど、どなたも美学会や表象文化論学会で活動しているみたいなので、どこかでお会いすることもあるだろう。今回のブラジルでの国際美学会には参加していなかった。ブラジル、高いし遠いしね。

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2022年7月3日パネル6 近現代ブラジルにおける芸術と「遊び」の精神 | 第16回大会 | Conventions | 表象文化論学会 https://www.repre.org/conventions/16/panel6/

居村 匠 (Takumi IMURA) - マイポータル - researchmap https://researchmap.jp/imuratakumi
居村 匠 (Takumi IMURA) - エリオ・オイチシカ《トロピカリア》における 侵襲性と〈食人の思想〉 - 論文 - researchmap https://researchmap.jp/imuratakumi/published_papers/19583985?lang=ja

山野井千晶さんはresearchmapが見つからず。

飯沼 洋子 (YOKO IINUMA) - マイポータル - researchmap https://researchmap.jp/yokoiinuma
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なんかみんなすごいなあ(と他人事のように言ってみる)。
(あまりおっさんが若者に「すごいすごい」と言うのもパワハラっぽくなるらしい。と若者から注意された。難しいもんである。)
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当日中の付記
2008-2009年の東京都現代美術館の展覧会の存在が大きそう。