和歌山から神戸に移動中の電車の中で読んだ。
とっても面白かった。ミステリーとしては火曜サスペンス劇場的なミステリーで、展開も結末も真犯人も予想が全くつかないとかではないのだけど、でも、主人公の生い立ちや現在、現在進行形と過去の事件、主人公と警察組織との関係等々が、少しずつ明らかにされていく語り口が上手くて、読み始めると面白くて止まらず、大阪駅で乗り換える時以外は中断せず、六甲道駅に着いた時にちょうど、読み終えた。
題材として、面白かった。
ろう者と聴者の文化の重なりあいとすれ違いを物語の進行の中に具体的に自然に織り込んで教えてくれるので、興味が尽きなかった。音響文化論のお勉強の一環と思って読んだのだが、良い読み物だった。例えば次のような事柄が、物語の中で自然に語られる。
聞こえない親を持つ聞こえる子どもを指す言葉として「CODA = Child of Deaf Adult」という言葉があることなんかまったく知らなかったし、ましてや、そういう子どもたちが、話し言葉ではなく手話を基盤とする「ろう文化(Deaf community)」に対して感じるある種の違和感のようなものとか、考えたこともなかった。デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)
「ろう者とは、日本手話という、日本語とは異なる言語を話す言語的少数者である」という「ろう文化宣言」というものがあるらしい。
そもそも手話にもふたつあって、昔からろう者の間で用いられ独特の言語として発達してきた日本手話と、日本語という話し言葉を表すために用いられる日本語対応手話があるらしい。日本手話で思考するものは「ろう文化」の仲間だが日本語で思考するものとは「ろう文化」の仲間ではない、という考え方もあるらしい。:「日本手話」「日本語対応手話」
等々
丸山 正樹
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