Gál, B. 2017. Updating the History of Sound Art. Leonardo Music Journal, 42(1), 78–81.
著者はサウンドインスタレーションを扱った博士論文を作成中。2つの言葉について事実誤認が多いことに気づいたので、2つの言葉の用例について判明した事実をまとめている。事実の記載だけでよろしい。
NY Times archiveを調べると、いずれの言葉も、60-70年代に少しずつ使われるようになり、2000年以降にはそれ以前より倍増しているとのこと。
◯sound artの場合
たいてい、William Hellermanがキュレーションした1983/1984のthe exhibition SOUND/ART が最初とされる。
が、著者はそれ以前の用法を発見した。美術批評家がSoundings (1981, Neuberger Museum)について美術批評家が語る言葉や、1979年にオーストリアで行われたAudio Scene ‘79や、Barbara LondonがMoMAで初めてやった展覧会のタイトルがSound Artであることなどに言及している。
著者が発見した一番古い用例は、Something Else Yearbook 1974。Jan HermanがBernard HeidsieckとHenri Chopinを形容するために使った事例。
◯sound installationの場合
Artの文脈では、最初はMax Neuhausが1982年に使ったのが最初とされることが多いらしい(リクト『サウンド・アート』などにおいて)。
ただし、著者はもっと古い用例を見つけた。最初期のTom Johnsonが1973年にNeuhausのWalkthroughについてsound installationと呼んでいる用例が、著者の発見した一番古い用例。Max Neuhaus自身も、自分のDrive in Musicという作品を1974年に再制作した際にsound installationという言葉を使っている。
◯sound installationとされる作品の場合
同時代にsound installationと呼ばれたわけではないが、最古のsound installationはDrive In Music (1967)とされている
が、Neuhausは1968年制作としていたが、実は1967年制作のFan Music (1967)の方が古い。
ちなみに、著者は、Drive in Musicはsound installationと呼べる作品ではないと考えている(が、そういう作品に対する価値判断はこの論文では控えられている)。
◯中川感想
「sound art」という言葉の初出を探し始めるとキリがないけど、Alan LichtのSound Artがそう書いていることもあり、「sound artという言葉の初出は1983年だ」とする説明が多かった。Wikipediaにもそう書かれている。でもこれは、ちょっと調べるだけで不正確なことが分かる。別に初出がいつでも構わないけど、簡単に判明することなので、70年代から使われていた言葉である、という認識が広まるとありがたい。
実は僕は2013年と2014年の調査でこれらのことを発見していたので、そのうち紀要に研究ノートを書こうと思っていたのだが、もう書けない。これが査読論文になるとは思わなかったが、まあ、短報としては十分なのだろう。
ところで、こういう調査では、『目と耳のために』展とかドイツ系のことはあまり調べないのかな?
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