メモ:山田風太郎『戦中派不戦日記』
(何とかブックチャレンジではないです)
昭和20年1月1日から12月31日までの、まだ何者でもない(医学生だった)山田の日記。
コロナ禍のなか断片的な時間しか捻出できない今なので、ピッタリな読書だった。細切れ読書で良いので。
また、「#検察庁法改正案に抗議します」やら「マスク二枚(さえまだ届けられていない)」やら「和牛券」やら飛び交う国で生きているので、ピッタリな読書だった。「愛国者」ってこうやって生息してるのかなあ、とか、こうやって「お国」に飼い慣らされるのだろうなあ、とか思ったので。昭和4,5年から20年頃の世相ってほんと今っぽい。21世紀を先取りしてる!
今年入学した大学生の大半にとって、安倍政権以外の政権の在り方は想像が付かないだろう。40過ぎの大学教員としては、彼らに〈安倍政権はこれこれこうだと言うこと〉よりは〈物事を正直公正に考えるという行為を反復させること〉が大事だと思っている。
のだが、はてさて。
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昭和45年に初めて出版されたらしく、昭和60年版のために書かれた橋本治による解説が秀逸。昭和20年という絶望的な社会的状況と、家を出て徴兵検査に落第してしかし何とか医大に潜り込み初めて心を許せそうな他人と一緒に暮らせるようになった山田の個人史と、時に愛国心溢れ時にその馬鹿馬鹿しさにも言及し時に目にした貧相な社会状況をそのまま記述する「正直な」この日記のトーンとを重ね合わせている。見事だ。
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