https://www.momaw.jp/exhibit/2022_summer12/
画家は、ずっと、波、雲、海岸、砂漠、山岳地帯、内臓などを想起させる柔らかな視覚的イメージを鉛筆で描き続けている人。展示会場には、画家が普段自宅近くの湯浅の海や川でなどで拾った貝殻やら化石やらウニの殻やらも展示されている。他に、丸や襞など同じようなモチーフを描いた所蔵品も展示されている。朝イチで行ったので、一人きりでじっくり見ることができた。
雲や砂漠〈のように見える〉が、現実世界に存在する具体的な事物を描いている訳ではないので、この鉛筆画はあくまでも抽象画。なのだけど、ゆっくり見ていると、人間は言語的論理ではなくこういう視覚的論理に支配されている瞬間も確かにあるよなあ、と感じたりする。こんなふうに心がゾワワと蠢いたりするよね、と感じる。つまり、とても具体的な心の動きのようなものを描いているように見える瞬間もある。
ともあれ、これは何よりも、視覚的快楽を喚起する絵画の展覧会だった。
視覚的だし触覚的だけど聴覚的じゃない、と感じた、たぶんモノクロだからではないか、と思う。抽象画は(カンディンスキー、ミロ、クレー、ポロックなど)視覚と聴覚をつなぐシナステジアな感性と親和性が高いけど、ここでは、視覚は聴覚よりも触覚と一緒に作用しているように感じられる。
「粘菌っぽさ」をあまり感じなかったな。個々の細部が蠢くというより全体的なイメージの統合性の方が重要だから、かな? でも、こういう絵画は細部を見ることこそが面白い。こちらの襞とあちらの襞は盛り上がり方がどう違うか、とかを観察することこそが面白い。
ウニの殻がこんなに綺麗だとは知りませんでした。自然は存外規則正しい。
デカいのが一番気持ち良かったです。《境現の襞III》(2006)って作品。
このひとは僧侶なのだけど、どんな顔して檀家に話をしているのだろう。
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