2017-01-31

メモ:金子登《音》(1969)について

美術手帖1969年8月号で、新国誠一が代表の「芸術研究協会」が第三回目の展覧会を開く、という記事がある。
そこには、金子登《音》という作品も出展されたらしい。これは、表面の金属製のビスに端子を触れると音が出て、その音が出る部分を点でつないでゆくと「音」という文字になるという「視覚と聴覚の一体化をねらう作品」。
おそらく、これは1962年に秋山邦晴が「4人の作曲」展を紹介して以来、久しぶりに、「音」をテーマとする作品が紹介された記事。

だが、この金子登という人が誰かよく分からない!!!
ご存じの方おられましたら、教えてください。

ここに名前が出ている方だとは思うのですが。
'71空間主義 コンクリート・ポエトリィ展

メモ:J. Marks & Shipen Lebzelter 『Rock and Other Four Letter Words』(1968)について



美術手帖1969年7月号の「快適混沌状態の耳きき」で植草甚一が紹介していた。ロックやポップスをコラージュしたあゔぁんぎゃるどなLPとのこと。シュトックハウゼンに捧げられているとのこと。
DiscogsヘのリンクMarks* And Lebzelter* - Rock And Other Four Letter Words (Vinyl, LP, Album) at Discogs
別に高くもないけど、CDにはなっていないし、ubu.comでも公開されていない。
youtubeに何曲かあるし、ここでも試聴できるけど、なんかあまりピンとこない。
同時に本も出版されたらしい(本は高くなっている)。同時代にこの本を買った人のアマゾンレビューが何とも微笑ましい。これが(フレデリック・ジェイムソンいうところの)「ノスタルジー」ってやつか?と思ったり。

and other four letter wordsってどういう意味なんだろう。

メモ:サイバネティック・ミュージック

美術手帖の1969年5月号に秋山邦晴「快的混沌状態の耳きき──サイバネティック・ミュージック」(168-171)という連載がある。
「サイバネティック・ミュージック」とは何かというと、この記事で秋山は結局のところ新しいコンピュータ音楽としてとらえているだけのように見える。
その元ネタは有名なものだったので、メモ。

秋山が参照して紹介しているのは『CYBERNETIC SERENDIPITY MUSIC』というLPで、これは1968年にロンドンで開催されて、今ではメディアアートの原点として記憶されることもあるらしい『サイバネティック・セレンディピティ(Cybernetic Serendipity)』展にあわせて作られたLP。
参照:「ロンドンICAで「サイバネティック・セレンディピティの記録資料展」が開催 | メディア芸術カレントコンテンツ」(2014年9月24日の記事)
wiki: Cybernetic Serendipity

このLPの音源は色々なところで公開されている。
http://cyberneticserendipity.net
http://ubu.com/sound/cybernetic.html
https://soundcloud.com/thevinylfactory/sets/various-artists-cybernetic


論文もある。
森岡祥倫「サイバネティック・セレンディピティ~システムの時代と芸術の未来(Cybernetic Serendipity: in an era of systemization and toward the future of art」 (2006, in Japanese)

2017-01-26

memo: Zimoun: a artist using sound


youtube で「sound art」で検索して出てきたもののなかで、面白いな、と思ったもの。
Zimounというスイス出身でベルリンで活動中の作家さんらしい。

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Curriculum Vitae
Using simple and functional components, Zimoun builds architecturally-minded platforms of sound. Exploring mechanical rhythm and flow in prepared systems, his installations incorporate commonplace industrial objects. In an obsessive display of simple and functional materials, these works articulate a tension between the orderly patterns of Modernism and the chaotic forces of life. Carrying an emotional depth, the acoustic hum of natural phenomena in Zimoun's minimalist constructions effortlessly reverberates.

Zimoun lives and works in Bern, Switzerland. Recent displays of his work include exhibitions at the Nam June Paik Art Museum in Korea; Kuandu Museum of Fine Arts, Taipei; Ringling Museum of Art, Florida; Harnett Museum of Art, Richmond; Contemporary Art Museum MAC Santiago de Chile; bitforms gallery New York; Kunsthalle Bern; Seoul Museum of Art; Museum of Contemporary Art Liechtenstein; Fine Arts Museum Rennes; Art Basel; Central for Contemporary Art Brussels; Galerie Denise René Paris; Museum Les Champs Libres, Rennes; Dr. Bhau Daji Lad Mumbai City Museum; Contemporary Art Museum MNAC Bucharest; Beall Art Center, Los Angeles; Museum of Fine Arts Bern; Museum of Contemporary Art MSUM, Ljubljana; National Art Museum, Beijing; Museum of Fine Arts Lugano; among others.
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2017-01-23

メモ:『Yangon Calling』(2013)

ミャンマーのパンクスのドキュメンタリー。ファッション・パンクじゃない「ホンモノのパンク(の初期衝動)」が感動的。あと、文化は国境を超えると似て非なるものになるという好例としても感動的。ミャンマーのパンクバンドが集結するライブは、たぶんかなり小さな場所で少人数で行われたんだろうと思うけど、それもステキ。
このドイツ語とビルマ語で書かれている本(→ドイツ語と英語だった)Alexander Dluzak (Director), Carsten Piefke (Director), Yangon Calling -Yangon Calling - Musik, Subkultur Und Politik In Myanmar (Book + [DVD], 2015の付属DVDだが映像には英語のナレーターと字幕がある


2016年9月にNHKでインドネシアのパンクのドキュメンタリーが放映された。「パンク」はドキュメンタリーにもなりやすかろう。
NHKドキュメンタリー - ドキュメンタリーWAVE▽ジャカルタ・パンク インドネシア抑圧された人々の叫び

同じく2016年9月には、これも出版されたのだった。こちらは「パンク」に限らない(けど、Cedrikさんの外見はまさに「パンク」だ。11月には会いそこねたので、次の機会にはぜひとも会いたい)。
Cedrik Fermont & Dimitri della Faille, Not Your World Music : Noise in South East Asia. 2016
free PDF versionへのリンク

出て来るバンドはSide Effect, Rebel Riot, No U Turn und System Holocaustそれぞれのバンドのウェブサイトなどは見つけられない
DVDのボーナス映像として含まれているSide Effectの初めて西ドイツ・ツアーの映像もステキ。

Yangon Calling – Punk in Myanmar
YANGON CALLING

Yangon Calling Crowdfunding from Yangon Calling on Vimeo.


Myanmar Woodstockというものがあるようだ
Witness Burma | Documentary Photography by Matt Grace | Rangoon Hardcore

2017-01-21

メモ:『卒業旅行~ニホンから来ました~』(1993)


岩渕功一『トランスナショナル・ジャパン』で、90年代の日本における「アジア」表象の事例として言及されていて興味を惹かれたので、VHSでしか入手できなかったけど、ヤフオクで入手した。
一留して4月から音響メーカーへの働き始める京都産業大学5年生の織田裕二が、東南アジアのチトワン王国というところに卒業旅行で一人旅しに来たところ、現地で怪しげな鹿賀丈史に丸め込まれて、「一発太郎」という名前で、SWAPの弟分の外タレとしてデビューしてしまう、というお話。ペッパー警部とかヤングマンを歌ってデビューして、毎日新しいアルバムをリリースして、でもなんやかんやあって、鶴田真由(と両親)が向かえに来て、なんやかんやあって、帰国する。
主人公(織田裕二)がデビューして帰国するまでとか、現地ブローカー(鹿賀丈史)がなぜ最後の最後まで主人公をだまくらかさないのかとか、主人公の恋人(鶴田真由)がどういう気持で主人公を好きでいたり嫌いになったりするのかとか、登場人物の心の動きがほとんどすべて、よく分からなかったので、これがDVDになっていないことは理解できる。東南アジアに対してなかなかに蔑視的だし、テレビ放映もされないだろう。

けど、〈「東南アジアの小国」でキラビヤカな衣装を着て懐メロを歌う織田裕二が「日本から来た外タレ」としてスターになる〉という物語が1993年に作られたというのは、バブルの残り香を嗅ぐようで、なんとも香ばしい。

これは、〈東南アジアでは「日本」はスゴイという物語〉を批判的に示す物語ではまったくないのだけど、当時、〈(西欧ではそれほどではないけど東南アジアでは)「日本」はスゲエ〉みたいな感覚を無批判に享受する雰囲気って、あったのか? そういう無神経な感覚はいつの時代もあったし今もあると思うけど、どの程度あったのかは分からない。これは僕が大学一年生の時に公開された映画なのだけど、そういう感覚は嫌いだったので、よく分からない。


卒業旅行 ニホンから来ました - Wikipedia


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2017-01-16

netflixで『キング・オブ・コメディ』(1982)

ストーカーとか有名人の扱いとか、30年前はこうだったんだあ、という物珍しい視点もあるけど、でも、今見ても面白かった。有名だけど見たことなかったし。つうか、これ見て、なんでコンビ名を「キング・オブ・コメディ」にしようと思うんだろう…?
スタンダップコメディって、面白くないよなあ…。
『タクシードライバー』は1976年。

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2017-01-15

netflixで『東京家族』(2013)

小津安二郎の『東京物語』(1953)のリメイクということだが、けっこう換骨奪胎していて、主人公のふたりが東京から「骨休め」に行くのは、箱根ではなく横浜だったり。
ともあれ、こんなにあざとく作られたらそりゃあ泣いてしまうけど、でも、涙で色々ごまかされてしまうような気分にもなる。
年末年始に母親の相手をして心底疲れた後なのでなおさら(2017年3月26日記)

東京家族 (映画) - Wikipedia

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2017-01-10

メモ:柴那典(とものり)『ヒットの崩壊』(講談社現代新書、2016)

面白かった。前の著作でも思ったけど、この人が思い描く「今の日本の音楽シーン」は大変ポジティヴで素晴らしい。
これは皮肉じゃなくて、自分とほどんど同じ年の人が、「今の日本の音楽シーン」にワクワクしながら注目していることとか、そうする理由もなるほど確かにそうかもしれないと思うような理由なので、何ともポジティヴなヴァイブスを感じることができるので、素晴らしいな、と思う。僕はここ20年ほどかけて、「今の日本の音楽シーン」ってつまらないなあ、と思うようになってきた人なので。

本書では、いくつかの「変化」が説明されている。ヒットチャート、テレビと音楽の関係、ライブ市場、J-POPの可能性の変化について語られている。
それぞれのトピックのなかで印象に残ったものをテキトーに書いてみると、ヒットチャートがCDの売上枚数から複合的な色々なものの指標に変化しつつあり、その測定にはカラオケの履歴も役立つんじゃないか、という話とか、テレビがスマホ片手に「参加」する「フェス」のような超大型特番が増えたという話とか、「踊ってみた」もフェスも「参加」するという点で同列に語れることとか、「ミクスチャー・ロック」は和製英語だし今のJ-POPのオリジナリティはちょっとこれはスゴイのだという話とか。まあ、この僕の抜書はけっこうテキトーなので不正確かもしれないけど、ともあれ、色々と腑に落ちる話もあって、面白かった。

2015年とか2016年というのは、CDが決定的に過去のメディアになった画期的な年らしい(207)。ということを2016年に断言する本を2017年の年始に読めたことは、なかなか良いことだった。
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とはいえ、僕はたぶん、この新書で語られている「ヒット」とは、今後もあまり親しまないんだろうなあ、とも思った。この新書を読んで初めてアデルとジャスティン・ビーバーを聞いているのだけど、何も頭のなかに入ってこない。
インターネットの普及の結果、(「ニッチの時代」が来るかもしれないという当初の想定とは少し違って)「ロングテール」と「モンスターヘッド」が二極化してきたらしいけど、そりゃ僕は、「ロングテール」の恩恵を受けている側だなあ。

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
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2017-01-01

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます
昨年は下の画像のような感じでした。
今年も良い年になると思います。
本年もよろしくお願いします。














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2016年にやった仕事
以下のすべてが細かい。
色々と忙しくやっていたつもりだけど、「2016年の業績」として印刷されるものって、『常盤台人間文化論叢』研究ノート:香港編だけだ…。
しかも、これ、研究ノートだ。共著も多いし。
2017年もがんばるぞー。
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論文
國學院紀要論文:1980年代日本のサウンド・アートと民族音楽学とサウンドスケープと音楽教育学(8,9月に書いた。出るのは2017年)
Leonardo Music Journal 27投稿論文数日前に投稿した通ると良いなあ

調査報告あるいは研究ノート
『常盤台人間文化論叢』研究ノート:香港編(何度も修正して2月頃まで書いて3月に出た)
『Cross Sections』関根直川調査報告出したのは5月だけどいつ出るのだろう…。

学会報告
7月:ICA20で発表:1980年代日本のサウンド・アートと民族音楽学(proceedingsには掲載される)
12月:Crossroad2016で発表:1980年代日本のサウンド・アートと音楽教育学(とくにアウトプットはされない)

小文
SpringerからA brief consideration on the relationship between sound art and tactile sense書いたのは2013年今年になって出版に向けて再始動出るのは2017年
アメリカ文化事典一項目(「実験音楽」):10月頃に提出した。出るのは2018年?
2015年12月のJASPMのワークショップ報告(提出したのは2016年1月。出るのは2017年?)

音響文化研究会トークイベント「#3 「紙のレコード」の作られ方 ゲスト 城一裕(情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 講師)」(2015年10月16日(金)、会場:京都市中京区MEDIASHOP)の記録 http://soundstudies.jp/t03/ →イベントの記録:トークの内容(PDF: 1.8MB)

作成中
『常盤台人間文化論叢』研究ノート:韓国編(出るのは2017年3月)