2017-01-10

メモ:柴那典(とものり)『ヒットの崩壊』(講談社現代新書、2016)

面白かった。前の著作でも思ったけど、この人が思い描く「今の日本の音楽シーン」は大変ポジティヴで素晴らしい。
これは皮肉じゃなくて、自分とほどんど同じ年の人が、「今の日本の音楽シーン」にワクワクしながら注目していることとか、そうする理由もなるほど確かにそうかもしれないと思うような理由なので、何ともポジティヴなヴァイブスを感じることができるので、素晴らしいな、と思う。僕はここ20年ほどかけて、「今の日本の音楽シーン」ってつまらないなあ、と思うようになってきた人なので。

本書では、いくつかの「変化」が説明されている。ヒットチャート、テレビと音楽の関係、ライブ市場、J-POPの可能性の変化について語られている。
それぞれのトピックのなかで印象に残ったものをテキトーに書いてみると、ヒットチャートがCDの売上枚数から複合的な色々なものの指標に変化しつつあり、その測定にはカラオケの履歴も役立つんじゃないか、という話とか、テレビがスマホ片手に「参加」する「フェス」のような超大型特番が増えたという話とか、「踊ってみた」もフェスも「参加」するという点で同列に語れることとか、「ミクスチャー・ロック」は和製英語だし今のJ-POPのオリジナリティはちょっとこれはスゴイのだという話とか。まあ、この僕の抜書はけっこうテキトーなので不正確かもしれないけど、ともあれ、色々と腑に落ちる話もあって、面白かった。

2015年とか2016年というのは、CDが決定的に過去のメディアになった画期的な年らしい(207)。ということを2016年に断言する本を2017年の年始に読めたことは、なかなか良いことだった。
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とはいえ、僕はたぶん、この新書で語られている「ヒット」とは、今後もあまり親しまないんだろうなあ、とも思った。この新書を読んで初めてアデルとジャスティン・ビーバーを聞いているのだけど、何も頭のなかに入ってこない。
インターネットの普及の結果、(「ニッチの時代」が来るかもしれないという当初の想定とは少し違って)「ロングテール」と「モンスターヘッド」が二極化してきたらしいけど、そりゃ僕は、「ロングテール」の恩恵を受けている側だなあ。

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
ヒットの崩壊 (講談社現代新書)柴 那典

講談社 2016-11-16
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