2022-05-27

長﨑励朗『偏愛的ポピュラー音楽の知識社会学』(創元社、2021年)と大和田俊之『アメリカ音楽の新しい地図』(筑摩書房、2021年)

昨年度、一年間大学に行っていなかった間に、長﨑励朗『偏愛的ポピュラー音楽の知識社会学』(創元社、2021年)と大和田俊之『アメリカ音楽の新しい地図』(筑摩書房、2021年)とを頂きました。今更ですが、ありがとうございます。どちらもポピュラー音楽研究を考える学生におすすめです。
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長﨑励朗『偏愛的ポピュラー音楽の知識社会学』(創元社、2021年)

第3章は、パンクから三上寛、反知性主義(ホフスタッター)、吉本隆明、遠藤ミチロウ、ジャックス、スーザン・ソンタグ、リチャード・ヘル、町田康、オングへと話がめぐっていました。木屋町のロック・バーでミュージシャンの固有名詞出しながらするとくに結論もないロックのお話に、学問的な色々を応用してみると見え方がすっかり変わる、ということの面白さを堪能できます。
これ、講義で聴けるなら刺激的だろうなあ。大学入学して昔のロックの「伝説」とか「逸話」とか知ったばかりで、そういうことに色々とお話することに目覚めたばかりのような学生に、オススメ。序文でバイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』に関連させて「聴いていない音楽について堂々と語る方法」ということが言われていて、学生のことをよく考えている先生だな、と思いました。
個人的には、今後、自分が授業を組み立てることへのモチベーションを高めるのに使いたいと思います。

大和田俊之『アメリカ音楽の新しい地図』(筑摩書房、2021年)

Webちくまの連載時に読んだものが多いのだけど、まとまるとすげえ本だなあ、と思いました。大和田さんはずっと存在感あるので気づかなかったけど、単著としては10年ぶりになるんですね。編著や共著が多かったということか。
大和田さんの本の面白さを僕が改めて言う必要はない気もするけど、前著『アメリカ音楽史』(講談社選書メチエ、2011年)全章を学生と(何度か)精読し、『ポップ・ミュージックを語る10の視点』(アルテスパブリッシング、2020年)の書評を書いた人間として、この本についても、音楽を語る言葉の在り方になんと気を遣っている書き手なのだろう、と思います。言葉のあり方というか、音楽を取り巻く様々な文脈や事件の束に対して鋭敏だ。個人的には、研究に対するこういう姿勢(あるいは音楽について語る姿勢)は見習いたいところ。また、ポピュラー音楽について卒論書こうと考える学生にはひとつのモデルとしてオススメしたいところです。
とはいえ、研究とか勉強とかではなく、読んで知的に面白がるのが良いような気もします。僕のアメリカ音楽の地図は10数年前で止まっていてほとんど更新されていないのだけど、今の若者はこの本を読んで、この本を超えて、どんどん更新していってもらいたい(そして僕に色々と教えて欲しい)。

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