2023-01-19

メモ:泉山中三『頭がさえるサウンド勉強術 音響心理学が解明した音の効果』(ごま書房、1980年)

1980年代の資料として入手した。「サウンド世代と呼ばれる最近の若者」に向けて「音楽によって勉強の能率を上げるという”サウンド勉強術”」を紹介する本。「音楽が人間の精神活動に刺激を与えることは、音響心理学の実験結果で明らかにされているが、この音楽の効用を積極的に取り入れるのが”サウンド勉強術”である」とのこと。さらに、音楽ファンを、ロック派、クラシック派、ポップ派、ムード派の四つに分類し、その分類に従ってレコードを紹介している。レコード会社と型番の紹介だけで、レコード・ジャケットの掲載や発売年の紹介などはない。

なんだ、このトンデモ本は…と思ったが、1980年の新書なのに「環境音楽」や「ブライアン・イーノ」に言及していた。1980年といえば、イーノのアンビエント・ミュージックについては、Rock Magazine誌ではじっくり紹介されていたが、より一般的なレベルではまだあまり知られていなかったんじゃないかと思うので、著者はけっこう専門家かもしれないと思って著者紹介を見れば、著者は、日本BGM協会理事なども務め、「日本のBGM不急に献身的努力を重ねてきた」人とのことだった。とりあえず、日本でかなり早い時期に「環境音楽」を紹介した事例の一つかもしれない、と考えておこう。実際のところはどうなんだろう。

次のような文章は、1980年日本で発売された一般向けの新書としては、けっこう珍しいはず。

「 話はすこし横道にそれるが、この環境音楽という考え方は、古典派、ロマン派、純粋鑑賞用の 音楽の時代を経て、近代・現代音楽で大きく見なおされている。

 たとえば、近代の作曲家の先駆といわれるエリック・サティは、「家具の音楽」といういい方 で、自分の音楽をコンサート会場用の楽曲でなく、「机の上にあるトランプ」や「パイプ」のよ うに存在する音楽でありたいといった。また、ロックの領域で活躍する作曲家ブライアン・イーノは、 「空港のための音楽」や「病院のための音楽」といった、ある特定された環境のための音楽を、数多く作曲している。

 考えてみれば、現代は、音楽史上もっとも環境音楽が盛んな時代といえるかもしれない。デパ ートや駅のホームや工場でBGMが使われるばかりでなく、現代の作曲家が作る音楽といえば、 テレビドラマや映画を盛り上げるための音楽であり、商品をより引き立たせるためのCMソングである。こう考えると、現代は環境音楽全盛の時代であり、BGMが世の中に充満している時代である。老婆心からいわせてもらえるなら、音楽があまりにも過剰なために自分を見失うこと になりがちである。自分に合った、勉強に合ったサウンドを自分なりに見つけ、効果的な使用法 を身につけておくことは、逆に言えば環境の中で、自分を見失わないためにも必要なことであろう。」(23)


頭がさえるサウンド勉強術 / 泉山中三 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784341012397

KAKEN — 研究者をさがす | 泉山 中三 (70119642) https://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000070119642/

:名前は「まさみ」と読むらしい。 

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