2013-02-14

恵比寿映像祭で「ソング・フォー・レント」

十数本の実験映画を見た。
全体的に、文脈依存なのが多かったように思う。ホイットニー美術館のキュレーターに映像を選んでもらったらしいが、そのキュレーターは、そのセレクションを日本で見せることの意味を考えていなかったのだろう。
あと、なんつうか、「映像作品」であることに甘えているというか守られているというか、そういうのが多かったように思う。これ「メディアアート」という枠組みで見られたら、けっこうつまらないのではないか?

フィルムにインクを何重にも重ねたものと、フィルムを地中に数日間埋めた後に上映する作品が面白かった。「メディア」をテーマとするモダンな作品は、分かりやすく面白い。

音に気を使ってる作品、無かったなあ。



今、恵比寿映像祭本体の展示を見ているのだが、こっちはけっこう面白い。

会場でクレヌマさんに遭遇しました。修論と卒論読み込むのに大変そうでした。
あと、来年度から院生になる奴も来てた。近所らしい。
感想きいときゃ良かった。


付記:映像祭本体の感想

宮永亮の作品がとても良かった!
田園風景と海と夜の都会のミクスチュア。

昭和13-20年に出版されていた、内閣情報部(のちに情報局)(編)『写真週報』が迫力があった。

「一億の火線はできた
狙へ 敵を
精進と増産で
叩け 敵を」

「五月の空に 手を伸ばせ
緑の風に 胸を張れ
強いからだ 明るい心
勝ち抜く力が ぐんと湧くぞ」

「いま
同じ地の果 空の極みに
兵隊さんは 死闘する
勝て 勝て 勝つんだ」

蓮沼執太展「音的」

面白かった。
懐が深そうだ。

アコースティックな音を使った自動生成音響装置(マイク・スタンドの先に取り付けたモーターで試験管を回転させて、そのなかのビーズが動く作品)や、スピーカー十台で塔を作ったインスタレーション作品や、壁の穴の奥から扇風機や音楽が聞こえてくるインスタレーションや、「自己紹介をする映像を流すためのテント布のインスタレーション」を作る様子とその制作メンバーの自己紹介の映像など。

これで、いわゆるフツーの「音楽」もやるんだから、「蓮沼執太は色々な活動をするひと」ということなんだろう。
「サウンドアート」とか考えないほうが良いのだろう。

最近、よくアサヒアートスクエアに行くなあ。
ーーーーーーーー¥
追記:《音の回転》について

会場各所に設置。
試験管のなかのビーズ。
モーターの回転によって、試験管のなかを移動。
藤本由紀夫を思い出す。
モーターそのものの音に気付くと、聴取の深度や尺度が変わる。
ビーズが、動く音の倍音まで聞こえ始める。

2013-02-13

メモ:『アルバム』(音楽)という言葉の由来、1930年代の音響技術と「クラシック」との関連などについて


1.
レコードの収録時間が一枚5分未満だったSPレコード時代に、クラシック音楽のSPを数枚セットでまとめて、本のような形で売ったのがいわゆる『アルバム』と呼ばれるようになったきっかけ。

2.
そもそも「アルバム」という言葉は「ラテン語の albo (白)に起源し、原義は「白いもの」という意味である。古代ローマで議事録として使われた白い石版がそう呼ばれたことから、関連するさまざまなものを記録にまとめたものを指すようになった」らしい(アルバム - 語源由来辞典)。

3.細かなメモ1
ちなみに、1930年代のレコード業界は、購買力のあるクラシック音楽の消費者頼みのところがあった(これについては、1966年のクルト・リース(Curt Riess)『レコードの文化史』以降のレコード史も記述している。それらは、この「クラシック音楽ファン」には日本人が多かったので、日本向けの輸出が増えた、とも記述している)。


4.細かなメモ2
David L. Mortonはこれより少し話を展開させる。

Mortonによれば、この時期の音響再生技術の開発はクラシック音楽ファンのためになされたものが多いらしい(Morton 2004: 92-93)。
例えば、ディスクチェンジャー(クラシック音楽再生のためには何枚ものSPを自動的に取り替えてくれる装置の需要があった)(初めて発売されたのは1927年)。
あるいは音質の改善(1920年代なかばに録音が電化された。1931年にはLPレコードも試作販売された―これは片面30分間録音できたが高かったしノイズもひどかったので、失敗に終わった―)。

5.細かなメモ3
David L. Mortonは、Morton 2000: ch.1ではHigh Fidelityへの志向とHigh-Brow Cultureを関連させる(高級文化志向と高音質志向は通底しているとか、そういう話。そうか?と思った)が、Morton 2004: 94-96ではあまり関連させていない。
Morton 2004では、「スタジオにおけるテクノロジーの改善」について話を展開している。

6.参考
Morton, Jr., David L. 2000. Off the Record: The Technology and Culture of Sound Recording in America. New Brunswick: Rutgers University Press.
---. 2004. Sound Recording The Life Story of a Technology. Westport, CT: Greenwood Press: 92.
歌崎和彦(編) 1998 『証言 日本洋楽レコード史(戦前編)』 東京:音楽之友社。
まちがい音楽用語辞典パート16
アルバム - Wikipedia


The History of Sound Recording Technology:一般書として分かりやすいMorton 2000をさらに分かりやすくしたウェブサイト。
David L. Morton, Jr., PhD | School of Industrial Design | Georgia Tech:Researcherってことは、まだこのひとはテニュアは獲得していないということか?

2013-02-12

モー・ル・プラデック(Maud Le Pladec)について

モー・ル・プラデックはフランスの振付家。今週末、TPAMでKAAT神奈川芸術劇場で公演を行う。15日に話を聞く。
ーーーーー
「彼女は、私たちが観たいと夢見るような、音楽を具象化し、奔放な想像力に開かれた、音楽と対峙するダンスを生み出します」という紹介があるが、音楽に触発された振り付けを行なっているところが面白い。
『Professor』では、ファウスト・ロミテッリ(Fausto Romitelli 1963-2004)の音楽にあわせた振り付けを制作している。ロミテッリは「イタリアン・スペクトル楽派三羽烏」(!)のひとりらしい。

以下、質問メモ
(1)
ちょっと考えるだけで「音(楽)と振り付けとの関係」には「模倣、反応、指示」の三種類くらいはあると思う。1.音(の動きや高低やリズム)を模倣する振り付け、2.音に反応する振り付け、3.音の動きなどを指で指し示したりする振り付け。1. imitation, 2. reaction, 3. indicationとまとめても良かろう。
知りたいのは、この「音と振付との関係性のレベルの相違」を、どのようにコントロールしているのか(いないのか)という点。また、それが、コレオグラフィの全体構造にどう関係しているのか(いないのか)という点。
コレオグラフィが展開するにつれて、1→2→3と深化(?)していくようには見えない。ランダムにテキトーに使っているのだろうか?

(2)
また、たとえば1についてだけ考えるとしても、「一音に対応して身体動作をひとつ配置する」ということは難しくて、必ず「グルーピングしたいくつかの音に対応して身体動作をひとつ配置する」ということをしないといけないわけだけど、その際、「音のグルーピング」はどのようなレベルで行なっているのか?
この音楽には、グリッサンドが多用されているし、微分音も使われているような気がするし。たぶん楽譜上の音響の関係性を詳細にチェックしてはいないと思うが。
ギターのフィードバックを多用するインプロヴィゼーションもあったし。

(3)
「音楽とダンスとの関係」という点で、ケージとカニンガムとのことを考えても良いかもしれない。

(4)
ダンスと音楽について、背景を知りたい。教育と影響関係。

(5)
なぜタイトルが『Professor』なのか? 教授とは誰か? また、なぜ、同じ服を着た男性が三人出てくるのか? なぜ同じ服なのか? なぜ三人なのか? なぜ男性なのか?

(6)
無音状態時の身体動作はどのように決定しているのか?
Lesson3の最初の「アクビの伝播みたいなところ」など。

ーーーーーーーーーーーーーーー
Professor 2月16日(土)19:30 KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
 TPAMパスでチケット不要 チケット:前売(チケットかながわ)・当日 ¥2,000 コンセプト・振付:モー・ル・プラデック 音楽:ファウスト・ロミテッリ『Professor Bad Trip』 出演:ジュリアン・ガレ=フェレ、フェリックス・オット、トム・ポーウェル 主催:アンスティチュ・フランセ横浜、国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2013 実行委員会 助成:アンスティチュ・フランセ 問合せ:アンスティチュ・フランセ横浜 045-201-1514 ✉ 詳細情報

モー・ル・プラデック
1999年、モンペリエの国立振付センター(CCN)でコンテンポラリー・ダンスを学ぶ。ダンサーとして岩淵多喜子、マチルド・モニエ、ボリス・シャルマッツ、メッテ・インヴァルセン等の振付家のダンサーとして活躍。2010年には初の振付作品『Professor』を、翌年には『Poetry』を制作。作曲家ファウスト・ロミテッリを巡る2部作となる。2013年には、音楽グループ「Bang on a Can All-Stars」とのプロジェクトのため、ニューヨークにてレジデンスを行う。 モー・ル・プラデックは、現在、新しい世代のフランス人振付家の中でも、最も注目される人物の1人です。彼女は、私たちが観たいと夢見るような、音楽を具象化し、奔放な想像力に開かれた、音楽と対峙するダンスを生み出します。ファウスト・ロミテッリの楽曲の持っている、ロック音楽のエネルギーや、アシッド・エレクトロ・ミュージックの炸裂や高揚感が、舞台上で具現化し、絶え間ないカタストロフィーや幻覚的な光景を生み出す、表現主義のダンスとなります。

2013-02-10

マームとジプシーの『あ、ストレンジャー』

これぞ小演劇、素晴らしい!と手放しで褒め称えよう。
と、途中まで思った。

断片的な小道具に意味を持たせ、その集積が物語に組み上がっていく。
あるいは、役者の空間内での立ち位置交換などによって物語の構造を重層化していく。
など。
そのプロセスが素晴らしい。

でも、オチが気に食わない。
これはカミュ『異邦人』が原案らしい。で、僕は、『異邦人』が初めて読んだ文学なので、このオチが気に食わない。
『異邦人』は、ムルソーが牢屋に入った後の部分こそが素晴らしいと思うのだ。

でも、機会があればまた見たい劇団だ。
あと何より、背もたれがあったのが最高に良かった!!!






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2013-02-09

スッパバンド

バンドが楽しそう!
ものすごくまとまったまま、伸縮しつつ上下左右に動くバンドだった。
これぞバンド・サウンド!って感じがする。



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Alfred Beach Sandal

このトリオ、演奏する場所によってずいぶん雰囲気が変わりそうだなあ、と思った。

2013-02-06

DVD: Gustav Deutsch, Film Ist 1-12 (1996-2002)

ドイチェは1952年ウィーン生まれの映像作家。これは20世紀末から21世紀初頭にかけて制作された、映画語法をテーマにしたメタ映画。
実験映画だし集中して見ないときついなあと思ったが、3あたりからとても面白くなってきた。
メタ映画がどうこうではなく、それぞれの作品に何が映されているかを説明した方が面白いと思う。
ちょっとリズムのあるドローン音楽も面白い。


1-6と7-12は別々に発表されたようだ。
1. 1-6

例えば、1では映像内部の動き(上から下へ、右から左へ、など)がテーマになっているようで、「部屋の外からさした光が上から下に動く映像」の次に「部屋の外からさした光が右から左に動く映像」が続き、その次に「波形の図形が左下から右上に波打つ映像」が続く、など。
4ではスライドが再生される。フィルムがコマ送りされ、コマの中に開けられたいくつかの穴が移動するようにみえる(映されている女性の表情も少し変化する)。「コマ送りがもたらす動感」がテーマだ、とまとめられるだろう(なんとなく参照できるかもしれない説明:Film ist. 1-6:)。

2. 7-12
1-6とは違って、サイレント映画における表現技法をテーマにしたメタ映画。
9ではサイレント映画の冒険のシーンが抜粋されて、少し遅い速度で再生される。10では「フィルムの汚れ」から抽象的なイメージが生成されたり、そのイメージが「夢の描写」と重ねあわせられたりする、などなど。

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1998?
1 Movement and Time
2 Light and Darkness
3 An Instrument
4 Material
5 The Blink of an Eye
6 A Mirror

2002?
7 comic
8 magic
9 conquest
10 writing and language
11 emotions and passion
12 memory and document

Gustav Deutsch - Film ist. (1-12) [PAL DVD] Index - Art into Life:
[DVD Index]
Film ist... [1-12] 77:00 min
BONUSTRACK 1: Uber. Gustav Deutsch
BONUSTRACK 2: Film ist. (1-12), DVD Installation


wuemme experimental film: Who's Who ; グスタフ・ドイチェ Gustav Deutsch:
ドイチェはオーストリアの映像作家。
(僕はどこでこの人のこの映像を知ったのだろう?)

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ふと、こういうメタ映画でも、筒井康隆が作ったらエンターテイメントになるのだろうなあ、と思った。
『文学部唯野教授』って、20世紀の批評理論とメタ小説を、大学を舞台にしたお話に組み込んでいたすごい小説だったなあ、と思って。
で、それを思い出したのは、最近、奥泉光の『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』をパラパラと読んでいるからである。いわゆる「潰れそうな田舎の私大」を舞台とする小説なのだが、物語はともかく(実はまだ一話目の半分くらいまでしか読んでない)、(一話目の最初にある)「(田舎にあるやたら名称が長い私立)大学の描写」が「ああ、そうだよなあ」と思うことが多く、恐ろしいお話なのである。

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)
筒井 康隆
4006020015

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
奥泉 光
4163804609

2013-02-05

宣伝:2/17(日)に三沢洋紀と岡林ロックンロール・センターが黄金町の試聴室その2でライブします。


よろしくお願いします。
ーーー
「妄想フォーライフ・ミュージック♯1」
<出演> 三沢洋紀と岡林ロックンロール・センター / タラチネ / 都市レコード

開場:17:30 / 開演:18:00
■料金:予約 1,500円+1drink(500円) / 当日 2,000円+1drink(500円)

http://cafe.taf.co.jp/live/index.html#live130217

Vitaphone

1.トーキーと音響技術史との接点
1.「映像と音声が同期したもの」を実現したもの
2.後に磁気テープに継承される、音響録音編集のプロトタイプ
3.「電化」(による音量増幅)が実現したもののひとつ
として重要。

2.Vitaphone

ヴァイタフォンは、Western Electric's Bell Laboratoriesが開発し、ワーナー・ブラザーズが購入した、フィルム映像と録音された音を同期させる、ディスク式のサウンド・システム。いわゆる「トーキー」はヴァイタフォンによって実現された。

1926年の『Don Juan』で初めて使われ(効果音と伴奏音楽が映像と同期)、翌1927年の『The Jazz Singer』で初めて「トーキー映画」のために使われた(歌と、初めてセリフも同期)。翌1928年には全編トーキーの『ニューヨークの灯火(Lights of New York)』が公開された。 

3.ディスク式とフィルム式
映像と音声を同期させるシステムは19世紀末から色々と試行されていたし、後に主流となるフィルム式のサウンド・システムも存在していたが、1930年まではディスク式が主流だった(とはいえディスク式が圧倒的に多数派だったわけでもないようで、1930年には200種類のフィルム式サウンド・システムが存在していたらしい)。
フィルム式が主流になるのは1930年代前半で、1936年までに映画館では、ディスク式はフィルム式に移行した。
ディスク式もフィルム式も、ひとりの発明家が生み出したものではなく、アメリカとヨーロッパの複数の地域で複数の人間と企業によって開発されたもの。

これは1929年にフィルム式を説明しているアニメーション


4.参考
D.L. Mortonのこの本の7章が短くまとまっていて良いと思う。
映画史の研究として何かあると思うが、知らない。簡潔なものがあれば教えて欲しい。

Morton, Jr., David L. 2004. Sound Recording The Life Story of a Technology. Westport, CT: Greenwood Press.
とくに ch.7 The Talkies: 69-79
Sound Recording: The Life Story of a Technology
David L., Jr. Morton
0801883989

トーキー - Wikipedia:えらく充実している記述。英語版WikiのSound filmを翻訳したもののようだ。英語版のWikiの典拠はなんだろう。

Vitaphone - Wikipedia, the free encyclopedia
ヴァイタフォン - Wikipedia:こっちは英語版Vitaphoneの記述にははるかに及ばない。

2013-02-03

Huluで『レスラー』(2008)

町山智浩やライムスター宇多丸が大絶賛していたけど、ナルシストのおっさんの話ではないかと思った。だって結局「自分」の話でしかないのだから。てやんでえ。

ガンズ・アンド・ローゼズが映えるコンテクストを垣間見た気がした。

このセリフ、良かった。
「80年代の音楽は最高だ!!ガンズ、モトリークルー、あの頃は最高だった!! → 90年代は最悪だ。ニルヴァーナが出て来た。」


ミッキー・ロークランブルフィッシュの記憶しかないけど、ランブルフィッシュがどんな映画だったかはよく覚えていない。




レスラー スペシャル・エディション [DVD]
B002UQVESY

マニフェスト
RHYMESTER
B002Y3DEK4



確かにこの曲と重なるかもしれんが。

2013-02-02

Dance in the dark 2013

暗いなか、ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ音がして、カサカサカサカサ動いていた。
福永敦の展示のあったアサヒアートスクエアにて。

福永敦 ハリーバリーコーラス展@アサヒ・アートスクエア

間に合った。
なんだか愉快な気分になる空間だ。

『アートと音楽』展

やっぱ、広瀬香美の歌のサビみたいな展覧会だった。
結局「なぜサウンドアートか共感覚にテーマを絞らなかったのか」とまた思った。

細かなメモはまた後日。

『アートと音楽』展

再訪。人いっぱい。
さて、どうかな。

突然

何の前触れも無しにスリッパがハムスターランドに旅立ってしまったので、今日は雨のなか大学に埋めに行かねばならない。



2013-01-28

メモ:斉田一樹+三原聡一郎《moids 2.2.1——創発する音響構造》(2009/12年)

ICCにて
面白かったのでメモ。



無響室(もう無響室じゃなくなっていたけど)の四方に、カチカチカチカチ音を立てる小さな機械が数十個配置されていて、それぞれが別々に、何かのルールに従って、音を立てたり光ったりする。どうやら、鑑賞者のたてる音や他のカチカチ音に連鎖反応を起こしているらしく、時折、クライマックスのような飽和状態に達しては、リセットされて無音状態に戻る(そのサイクルは10分もかからない)。

もはや完全密閉されていないので無響室じゃないけど、それでも音の反響は小さいので、それぞれのカチカチがどの方向から聞こえてくるのかよく分かるし、距離もけっこうよく分かる。これに一番近いのはおそらく「森や林の中で四方八方から虫の鳴き声が聞こえてくる状況」だろう。それぞれの音が互いに反応し合うことで全体的な環境を作り上げ、それぞれはその環境にも反応する、というシステムが似ている。

つまり、これは、複数の個と全体の相互作用が織りなす擬似世界に鑑賞者もその一部として参加するインスタレーション作品だ。こうまとめてしまうと何だか面白くないけど、この作品の小気味良い点は、その擬似世界のルールがどうやらかなりシンプルにできていそうなところだ。また、そうして作り上げられる「世界」も、基本的には「光の明滅とカチカチ音」だけでできている。ひとは世界と反応しあって生きているというアタリマエのことをやたらシンプルに提示している点、それがこの作品の面白いところかもしれない。

と、今(2013-01-28午前1時14分)、眠い目をこすりながら考えました。
「環境との相互作用における聴覚の役割」を意識させる効果とかもあるけど、もう眠いので寝ます。

ーーーーーーーー
こういう「カチカチ音」は色々なサウンドオブジェに使われているのを聞く。たぶん、この音を出す機械は作りやすいんだろうなあ。

一番すぐに思い出すのは小杉武久作のサウンドオブジェ。
こんなの。

Interspersion, 1998

Interspersion for Lights and Sound, 2000.
Pulses, 2008


まあ、色んな人が使ってる音だよなあ。
ーーーーーーーー
三原聡一郎というサウンドアーティスト
のことはこのテキストで知った。最後の「芸術の方法としての音とは?」という節に感銘をうけたのだった。
CBCNET : TOPIC » “Sound Art. Sound as a Medium of Art” 『サウンドアート. 芸術の方法としての音』:

2012年度の東京ソニックアワードで坂本龍一特別審査員賞を受賞したらしい。


ーーーーーTwitterでの感想ーーーーー

2013年01月26日(土) 15 tweets

ソース取得:   



面白かった。無響室(もう無響の部屋ではなくなっていて残念だったが)にあった。四方から聞こえてくるカチカチカチカチ。小杉武久のサウンドオブジェみたいな奴。サイトスペシフィックじゃない「音を使う芸術」が洗練されるとこうなるなあ。 #fb http://t.co/11hYOWXC
posted at 17:16:15
時間軸上で知覚のポイントを散らして環境に埋没させる、とか。説明すると難しいな、これ。でも面白かったです。#fb http://t.co/11hYOWXC
posted at 17:18:01



2013-01-26

『アノニマス・ライフ』展@ICC

「ひと」という表象を揺さぶらせる作品を集めた展覧会として、楽しんだ。

「不気味の谷」を実際に示してくれるアンドロイドや、日常的な身体を異化する写真を提示するやなぎみわや、身体に手を加える様子を見せるアーティストなど。

高嶺格の衣服交換は、あれは「人間観の変化」と考えるべきものか?! と思いました。

2013-01-20

「サウンド・デザイン」とか「コンポジション」という言葉ーコーネリアスのインタビューより

サンレコ最新号で、小山田圭吾(コーネリアス)がNHK『デザインあ』の音楽(「サウンドトラック」らしい)についてインタビューを受けている。
「サウンド・デザイン」とか「コンポジション」という言葉が、ぼんやりと「普通じゃない音楽の作り方」という意味で使われていて、そのぼんやりさ加減が面白い。


「質問者:ビートも4拍子系ではなく3拍子系が多かったり、その辺の自由さが通常のアルバムとは違いますよね。
小山田:まあ、デザインの番組なんでサウンド・デザイン的、コンポジション的な作り方をした音楽が合うかなと。「デザインかぞえうた」とかが特にそうですね。」
(「インタビュー|コーネリアス」『サウンド&レコーディング・マガジン』2013年2月号、27ページ)
とか。



NHK「デザインあ」
コーネリアス B009ZH4LTK
ちなみに、最近小山田は大量に機材を処分したらしいが、Roland CR-78は残しておいたらしい。『デザインあ』の音楽の多くは、Roland CR-78でリズムを作っているらしい。

2013-01-16

DVD: How to Get Out of Cage - A Year with John Cage (2012)

1.予想通り、新しい内容はなく、あまり面白くなかった。
2.が、一緒に収録されていたExperimental Filmsが面白かった!
3.監督はFrank Scheffer
ーーー
1.本編について
ケージの箴言を断片的に拝聴する映像と、ケージの音楽の断片的な映像の組み合わせ。
で、全体的によく分からない。
◯メモ
11:05- : Roaratorioの映像
25:30- : Tudorの語り
27:53-31:05 : 小杉武久について
47:06- : Europeraの映像


◯自分なら、どういうケージ映画を見たいか考えてみた。
ケージの作品と言葉があって、その両方から多方面に影響が及んでいるのがケージの面白いところだと思うので、そういう、ケージ的ないろいろを概観するものが見たい。
なので、「1.ケージの作品と言葉」と「2.ケージの与えた/ケージからの影響」を見せる映画が見たい。

1.ケージの作品と言葉
1.1.ケージの音楽:ケージ作品を聴く映像
:コンサート会場で座って聞くものの場合は、もう少し時間を使った映像。
:ミュージサーカスとかヴァリエーションズでも良いけど「屋内や屋外の会場内を歩きまわってきく音楽」の映像。

1.2.ケージの考える「音楽を聴くあり方」を示す映像
:ケージ作品ではないけれど、相互浸透と融通無礙(interpenetration and nonobstraction)な音響を聴く経験を必要とする音楽はあると思うので、それを聴く映像。
:そういう「聴き方」は、ケージの発明品だと言える気もするので。

2.ケージの与えた/ケージからの影響
2.1.クラシック、ジャズ、ロック、ポップスの音楽家への影響
:これ、難しそうだなあ。ただ、坂本龍一や大友良英の言葉が欲しいわけではないので(でもやっぱ他にはいないか…)。

2.2.その聴衆への(間接的な)影響
:クラブやライブハウスで時々語られる「ジョン・ケージ」のことを念頭に置いている。

2.3.視覚芸術家への影響
:これは色々ありそう。「サウンドアート」のことを念頭に置いている。

2.4.その観衆への(間接的な)影響
:これも色々ありそう。


きちんと考えると、映画の内容を考えるのはけっこう難しいことに気づいた。

2.付録のExperimental Filmsについて

◯CHESSFILMNOISE (1988), 17:21mins
the first film dir. by J. Cage
チェスをしている様子を盤上から撮影したものと、チェスをしている最中の(チェス盤の?)ノイズ

◯Wagner's Ring (1987), 4:24mins
conceived by Cage, dir. by F. Scheffer
ワーグナーの《指輪》(の全体か部分かは不明)が早回し映像で4分24秒に。

◯RYOANJI (2011), 60:37mins
ケージ《RYOANJI》(1983)に、龍安寺のイメージ・ショット(静止画)を重ねたもの。この重ねる順番と長さは、F. Schefferがチャンス・オペレーションズで決めたものらしい。

◯NOPERA (1995), 5:56mins
dir. by F. Scheffer
チェスをしながら作品のアイデアを語るケージ



◯STIPERA'S I & II (1992), 3:05mins

dir. by F. Scheffer
Europera I&IIに基づく作品。
《Europera I&II》(の全体か部分かは不明)が早回し映像で5分56秒に。

→参照:ジョン・ケージ生誕100周年記念リリース - TOWER RECORDS ONLINE:

3.監督のFrank Schefferについて
How to Get Out of the Cage: A Year With John Cage [DVD] [Import]
B008DWFZQG
From Zero [DVD] [Import]
B00011V8C2
このDVD映像、見たことあるなあ、と思ってたら、これは『From Zero』(1994)のために使った映像を再編集したものだったらしい。

また、監督のFrank Schefferは、ケージ以外にもたくさんの、音楽を主題とする映画を撮影しているようだ。
Louis Andriessen、ベリオ、ブーレーズ、シュトックハウゼン、B.イーノの『Music for Airports』のための(?)ビデオ、F.ザッパ、エリオット・カーター などなど。

あるいは、1995年にアムステルダムで行われたマーラー・フェスティバルのドキュメンタリーも撮影しているとのこと。


『Sonic Acts: From Stockhausen to Squarepusher』(1998)というのもある。Youtubeにもあるし面白そうだなと思ったが、これ、オランダ語だ…。


2013-01-05

メモ:整形外科と整体

月曜日以降、行くこと

1.整形外科:郷整形外科医院

日の出町から徒歩

〒231-0033 神奈川県横浜市中区長者町9丁目166‎
045-242-8553

診療時間

月~土 9:00~12:30
月~金 15:00~19:00
休診日:日・祝


2.整形外科:吉田整形外科医院
横浜駅から徒歩


〒220-0004 神奈川県横浜市西区北幸1-4-1 横浜天理ビル5F
045-312-4902

診療時間
午前:10:00~12:30
午後:14:00~18:00

休診日:土曜・日曜・祝日

3.整体:横浜・戸部 整体 整処 らく喜(らくよし)
戸部駅から徒歩、ラーメン市場の上
045-548-4135

4.整体?:戸部身体均整研究所 (神経・筋・脊椎整復研究所)
戸部駅から徒歩
045-323-3540
AM 10:00 ~ PM 8:00 完全予約制
二時間程度



2013-01-03

メモ:『細野真宏の世界一わかりやすい株の本』

何かの話の流れで「株」について学ぼう、と思い立ち、読んでみた。
これできっと来年の今頃は僕ももう、がっぽがっぽ株で儲けて困ってしまっていることだろう。

2013-01-01

あけましておめでとうございます

昨年は下の画像のような感じでした。
今年も良い年になると思います。
本年もよろしくお願いします。

2012-12-31

映画館で『007スカイフォール』

面白かった。
最初のバイクの追跡シーンが最高。
ボンド墜落シーンの描写が、サムメンデス! 『アメリカンビューティー』のビニール袋を思い出した。
そういう「映画的な描写」がかっこよかった!物語はどうも腑に落ちないところもあったけど。
良い大晦日だ。

軍艦島は、夏頃に軍艦島をテーマにした実験映画を見ていたので、登場してすぐに分かった。特異な場所なんだな、やっぱ。

2012-12-30

memo-相倉久人『至高の日本ジャズ史』(集英社新書、2012年)

帰省の新幹線がうまくとれなかったので、ひかりのグリーン車に乗っている間にチェックした。
以下、簡単にメモ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
これは山下洋輔が病気療養を終えて本格的に活動を開始した70年代頭くらいを頂点とする、その時代までの記述。
日本のジャズ史というより、相倉久人という、70年まで「ジャズの現場」にいた評論家の(思い出)話。
刀根康尚の『現代芸術の位相』みたいなものが、2012年になってやっと書かれたみたいなものか。

1.
この人は1970年にジャズ評論を辞めた人らしい。この人の文章は「論理的には信用出来ない」し、文章は基本的に「自己完結している」と思うけど、この人が話す様子は、きっと、とても面白いのだと思う。

2.
1950-60年代の「ジャズ批評に関わっていた人の言葉」を初めて読んだ。
この種類の言葉―「ジャズ原理主義」とか「ジャズ理想主義」とか言えそう―の典型として、一次資料として面白い。

3.
僕は批評とか評論には本当に関心がないようだ。
渋谷陽一のロックのディスクガイドで「音楽を語る言葉」に目覚めたと思ってきたが…。

4.
「日本におけるゲンダイオンガクの受容」と「ゲージュツとしてのジャズ受容」が、幾つかの局面で絡んでいた事例に言及しているので、参照すること。
1962年のケージ・ショックへの言及や、「新世紀音楽研究所」や「ジャズ・ギャラリー8」の活動など。

至高の日本ジャズ全史 (集英社新書)
相倉 久人
4087206696

現代芸術の位相―芸術は思想たりうるか (1970年)
刀根 康尚
B000J92G5E




2012-12-23

五味康祐(ごみやすすけ)『柳生武芸帳』

年末年始の新幹線で読むことになるかもしれないと思ったが、もうこれ以上読み進める自信がない。

オーディオ評論家としての五味康祐の文章を読む前に、小説を読んでみようと思った。
が、この小説は上下巻共に文庫本で700ページ近くあり、100ページほど読み進めたけれど、いっこうに物語が進行しない。
松岡正剛が上手いこと書いている。「この物語には中心がなく、周辺ばかりが肥大する。…周辺が肥大しているのに、そこにフラクタルに細部の襞が複雑に流れこむので、どこにも一つのストーリーラインというものが見えてこない」。
「それなのに多くの読者はおそらくは一種異様な感動のようなものをもった」らしいが、僕はそろそろ挫折することにする。

「読み応え」がない。
山田風太郎とは違うなあ。
古いからかな?

柳生武芸帳〈上〉 (文春文庫)
五味 康祐
4167335131

メモ:
松岡正剛の千夜千冊『柳生武芸帳』上・下 五味康祐:
五味康祐 - Wikipedia
柳生武芸帳 - Wikipedia

初出は昭和31年(1956)2月「週刊新潮」。「週刊現代」「週刊文春」「朝日ジャーナル」「少年マガジン」「少年サンデー」が一斉に登場した年より3年はやく、当時のサラリーマンの多くが読んだらしい。つまり、当時の「大衆娯楽」の最前線だったということらしい。
戦後のいわゆる時代劇モノはこの『柳生武芸帳』に端を発するらしい。

DVDで『ヤング≒アダルト』(2011)

とくに何も、問題が解決したり登場人物が変わったりしない終わり方が素晴らしい。

仕事も恋愛もうまくいかない、高校時代は「クイーン気取りのビッチ」だった30代の女性が、妻子のいる元恋人と復縁しようと大騒動を繰り広げるドラマ。
だけど、これは「ガキのまま中年になったシャーリーズ・セロン演じるメイビスの”イタさ”」を味わうだけのお話じゃない、ってのが、良かった。
最後の最後には逞しい自己肯定に至るステキなお話だった。
最後に、その他の登場人物とか話の伏線とかをほったらかすやり方が素晴らしかった。
ヤング≒アダルト [DVD]
B00A0K9I1M


これ、『マイレージ・マイライフ』や『サンキュー・フォー・スモーキング』の監督の作品かあ。
なるほど!
ジェイソン・ライトマン - Wikipedia:

メモ:デザインあ


デザインあ:ウェブサイト

デザインあ - Wikipedia:

2011年4月から放送されている、デザインを題材とした子供教育番組

総合指導:佐藤卓(グラフィックデザイナー)
映像監修:中村勇吾(インターフェースデザイナー)
音楽:コーネリアス(ミュージシャン)

が中心。

「音響詩」とか「視覚詩」とかと関連させて考えると面白いなあ。
あるいは抽象的アニメーションと。
かつてのアヴァンギャルドは、ポップになったような感じのものとして。でもたぶん影響関係はないんだろうな。
刀根康尚とOvalのようなものか?!



2012-12-20

宣伝:12月24日に三沢洋紀と岡林ロックンロール・センターでライブ@渋谷O-nest

よろしくです。
1600-2200のイベントで、5階のほうで1855-1935に出演します。
アニス&ラカンカ」というデュオの企画で、これは「mmm(ミーマイモー)」と「埋火の見汐麻衣」のユニットだそうです(PV見て、なんだこれは?と思った。とにかく英語は達者なようだ)。
[ototoy] 特集: ANISS & LACANCA
今はとにかく「当日の最高気温は9度」という天気予報に、しんなり/げんなりしている。
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http://shibuya-o.com/nest/2012/12/15509
★12/24(月・祝)@渋谷O-nest
「アニス&ラカンカ X'mas party」

open16:00〜close22:00 ¥2500/¥2800(+1D)
5Fと6Fを使って行います。

ACT
アニス&ラカンカ
王舟
フジワラサトシ
insect taboo【虫博士 vo., 宇波拓 g., 足立智美 トモミン, 鍵盤ハーモニカ, 河崎純 b., 下田温泉 dr. 】
FALSETTOS
三沢洋紀と岡林ロックンロール・センター
麓健一

DJ(ディスクジョーッキー)アニス&ラカンカ/ilojilo

チケット予約
11/10〜
Pコード:184-964
Lコード:77878
nest店頭
THISHEATWEB:info@thisheat.net(日程/お名前/枚数も記入してください。)

※あにかん先輩たちと渋谷でイブイブ〜!!

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タイムテーブル

16:00 OPEN22:00CLOSE

6F
16:0016:30 DJアニス&ラカンカ

17:0517:35 王舟(30min)

18:2018:50麓健一(30min)

19:4020:10ビンゴ  DJilojilo (30min)

21:0021:40アニス&ラカンカ(40min)

21:40DJilojiio



5F

16:3017:00 ファルセッツ(30min)

17:4018:15フジワラサトシ(35min)

18:5519:35三沢洋紀と岡林ロックンロールセンター(40min)

20:1520:55インセクトタブー(40min)
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2012-12-18

2012年12月15日生成音楽WSワークショップ-虫の音楽-まとめ

最も元気のよかった蜘蛛とゴキブリの夢の共演
(この黄色のプラスチックの裏に圧電マイクがあり、虫の足音を拾うという仕掛けです。ピンク色で隠した後ろには蜘蛛とゴキブリがいます。アレなのでピンク色で隠してます。)
今年度のスタジオにも生成音楽ワークショップ(Twitter ID: 生成音楽ワークショップ (generativemusic))に来てもらってワークショップを行なってもらいました。先週土曜日が1回目。2回目は2月18日(月)の予定です。近日中に、参加した学生がもう少し詳しくまとめて映像などもつけてレポートを公開する予定です。このポストはとりあえずの記録/メモ。

→記録を公開しました。

ーーーーーーーー
1.
この学部スタジオ授業に、基本的にはハードコアな企画ばっかしてる生成音楽ワークショップに来てもらう主な狙いは「音楽という題目のもとで行われる活動の広さを知ってもらうこと」です。あるいは「音を用いた活動の幅広さに触れること」です。変なコト/モノを”音楽”として提示する活動に接することでポカーンとしてもらえたら良いなあ、と思って来てもらってます。

2.
で、基本的に、企画はお任せで来てもらってるのだけど、今回は”虫の音楽”をやりました。自然豊かな横国のキャンパスのなかで虫を集めてきて、その虫の音を聞こう、という企画でした。
最初聞いたときは「この寒いのになに言ってんだ、こりゃ、この企画はコケるな」と思い、当日は雨も降っていたしとても寒かったのでその疑念はほぼ確信に変わったのですが、「寒いなか落ち葉を掘り返しながら昆虫採集をする」とか「暖かい部屋に戻って割り箸で虫をいじって、虫が動く音を聞く」とかいう作業はけっこう面白かったようで、けっこう盛り上がりました。

3.
「普段は聞こえないけれども拡大増幅して聞こえるようにした音」は、いつもとは違う耳の使い方をさせるものだし、いつもとは違う音の動きに改めて注意をうながすものなので、まあそれなりに面白いものです。まとめると―こういうのは「まとめる」と味気ないもんですが―、「いつもとは違う耳の使い方をすること」と「いつもは気づかない音に改めて注意を向けること」ってのがポイントなんでしょう。まあ、詳しくは近日中に学生たちがうまいことまとめてくれるでしょう。

4.
中川個人の感想を一言。
何よりもまず、虫が気持ち悪かった。ハムスターなら良かったのに(でもハムスターはストレスに弱いのでこういうのに使ってはいけない)。
「虫が動いてカサコソカサコソと立てる音に対して、間髪入れずに”いいねえ”と言う生成音楽WSの感性」を提示できたワークショップとして、良かったのだと思います。中川は「そういう感性は半分くらいは共有できる」という感じの人です。

5.
>当日参加した学生のみんな
では、MLで連絡した要領で、あとのまとめ、よろしく。

ーーーーーーーー
◯メモ:Leif Brush
ちなみにこの”虫の音楽”は、Leif Brushというサウンド・アーティスト(terrestrial wind monitorings)からヒントを得た、もしくはインスパイアされたものらしいです(クレジット関係がどういうことになっているのかよく分かりません。そのうち生成音楽WSのふたりが教えてくれるでしょう)。

虫じゃなくて動物を使う音楽ならアタナシウス・キルヒャーのcat organってのが有名だそうです。

◯メモ:Mira Calix - Nunu
虫を使う音楽としてMira CalixってひとのPVを紹介していました(でもまあこれは虫の音楽じゃないですな。イギリスのWarpってレーベルのミュージシャンなので「エレクトロニカ」とかいわれるジャンルのひとみたい。よく知らないけど)。
05/04/2007 Mira Calix - Nunu (Live In Russia)

2012-12-17

memo: コロムビア創立100周年記念企画『文化を聴く〜自作朗読の世界〜』




確かに与謝野晶子の朗読は恐ろしいかもしれん。室生犀星もなかなかのものだと思う。
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『文化を聴く〜自作朗読の世界〜』というCDで大正期以降の詩人による自作の朗読を聞いている。詩人は朗読がうまくない、というか、下手くそ。というか、味わい方がサッパリ分からない。ということが分かった。|Listening to “乃木坂倶楽部・火・沼沢地方” by 萩原朔太郎 ♫
posted at 11:52:02
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曲目リスト

ディスク:1
1. 思ひ出|斷章 (MONO)
2. 汐首岬|邪宗門祕曲 (MONO)
3. トラピストの牛|渚 (MONO)
4. 鴨 (MONO)
5. 水上|月夜の風 (MONO)
6. 源氏物語 (MONO)
7. 乃木坂倶楽部|火|沼沢地方 (MONO)
8. こころ|足羽川|蝉頃|春の庭 (MONO)
9. ためいき・故園晩秋の歌 他 (MONO)
10. 中辺路懐古|貴船奥の宮|桜島|八雲旧居を訪ふ (MONO)
11. 塔影 (MONO)
12. 詩の金堂 (MONO)
13. 落花の雪 (MONO)
14. 長歌 干瀬の浪 (MONO)
15. 旅|建設-新律格による-|客人 (散文詩) (MONO)
16. 秋の夕|気候|キュピドの矢 (MONO)
17. 寧楽の第一夜|母の部屋 (MONO)
ディスク:2
1. 南京にて 他 (MONO)
2. みんなみの海のはてより (MONO)
3. 夕暮の空に富士あり 他 (MONO)
4. 上総大原の海辺にて、夏、嵐の後の夜空を仰ぎて 他 (MONO)
5. 昨日より 他 (MONO)
6. ゆふされば 他 (MONO)
7. 箱根に遊ぶ 他 (MONO)
8. 春・夏・秋・冬 (MONO)
9. 近詠 (MONO)
10. 大宮の春|宮城|豐明殿|賢所 (MONO)
11. 俳句の話(一) 「俳句とは何か」~「花鳥諷詠」 (MONO)
12. 俳句の話(二) 「深は新なり 古壷新酒」~「特異な詩」 (MONO)
13. ベニスの商人 (MONO)
14. 「ハムレット」より 生死疑問独白の場 (MONO)
15. 土と兵隊 (MONO)
16. はじめの詩|汽車の窓にて|おわりの詩 (MONO)
コロムビア創立100周年記念企画 文化を聴く
V.A
B004717G0U

2012-12-13

メモ:永井均『マンガは哲学する』

この吉田戦車の4コマ―「新しい字を発明しました」―への言及をチェックしたかったので読んだ。軽い本だったしさらっと読めた。けっこうコジツケなお話も多かったけど。
マンガは哲学する (岩波現代文庫)
永井 均
4006031831


2012-12-06

American BandstandにはP.I.L.も出演していた。

懐の深い番組だ。40年近く続くとそりゃ色々変わるだろうが。

American Bandstandについて


1952年から1989年まで続いた、ティーンの視聴者参加型のダンス番組。
いわゆる1959年に死んだロックンロールの代わりに(正確にはそれ以前から流行っていたので「代わりに」と言うべきではないだろうが)、当時のアメリカのポピュラー音楽のなかで抜きん出て影響力を持つようになったらしい。
1956年以降はDick Clarkがホスト。

1.いわゆる1959年のロックの死 のオルタナティヴのための場所のひとつとして認識しておくこと
2.視聴者参加型音楽番組のハシリとして認識しておくこと(これが『ソウル・トレイン』とか『アメリカン・アイドル』にそのままつながるのかどうかは知らないが)
3.映画『ヘアスプレー』は、この番組をめぐる当時(1962年)の状況の一端を教えてくれるものかもしれない。これは面白い映画だった。
ヘアスプレー (2007年の映画)


ヘアスプレー [DVD]
B0021ZMHQM


2012-12-03

メモ:DVDで『レス・ポールの伝説』(2007)

・多重録音開始前はジャンゴラインハルトからの影響が大きくて、ジャズギタリストとして活動していて、ビングクロスビーから多くを学んだらしい。
・1950年代前半にマルチトラック録音が可能になっていて、マイルスデイビスもいて、シュトックハウゼンの電子音楽もあったわけだ。色んな「音楽」があったと考えるべきか。
音楽界の革新者/発明家 レス・ポールさん死去
レス・ポールの伝説|08・8・23ロードショー
レス・ポールの伝説 - Wikipedia

・予告編

・何回も聴いているうちにすごくかっこよく聞こえてきた。