ものすごく具体的なハンドブックだったので、とても面白く読んだ。「展覧会」なるイベントから遠く離れていないけど、その準備の実際的な作業についてはほぼ知らないから、〈ああ、なるほど、へー〉と思いながら読めた。
「経験を積めば、さまざまな検討がある程度つきやすくなるものだが、とにかく最初は一つずつやってみるしかない」(59)。
生きてるだけでまるもうけ
ものすごく具体的なハンドブックだったので、とても面白く読んだ。「展覧会」なるイベントから遠く離れていないけど、その準備の実際的な作業についてはほぼ知らないから、〈ああ、なるほど、へー〉と思いながら読めた。
「経験を積めば、さまざまな検討がある程度つきやすくなるものだが、とにかく最初は一つずつやってみるしかない」(59)。
Catherine Ceresole: Beauty Lies in the Eye Thurston Moore https://www.amazon.co.jp/dp/3905929430/ref=cm_sw_r_tw_dp_HPVPN35918TTM1F5BNWC
東京都現代美術館のクリスチャン・マークレー展で、Nadiffで販売されていたクリスチャン・マークレー関連本として購入。この時は「Amazonでも売り切れていたあれやこれやが買えるなんて!」と思っていたが、帰宅してから確認したら、全部Amazonで購入可能になっていた。なんだったんだろう…?
ともあれ、これは〈クリスチャン・マークレーの本〉ではなく、写真家カトリーヌ・セレソールが80年代のNYダウンタウンシーンを撮影した写真集。マークレーのMon Ton Sonなども撮影されている。DNAやソニック・ユースなども。90年代以降の写真もある。
僕は自分の好きな音楽ジャンルを説明する時に「80年代前半のNYのノー・ウェーヴ」というので、ここらへんがまさにぴったりなのだが、写真を見ると、なんだかめんどくさそーだなー、と思ったりもする。これは、狭くて暗いライブハウスやクラブで「変なこと」しようとしていた音楽家たちの写真集。そこにまつわる色々な価値判断の在り方などを想像して、めんどくさそー、と感じるのかもしれない。80年代前半ノー・ウェーヴなら何でも大好き!ではない、ということだと思う。
もちろん〈かっこいー〉とも感じているが。
塩尻かおり『かおりの生態学 葉の香りがつなげる生き物たち』(共立出版、2021年)
かおりが虫や植物の行動やコミュニケーションにおいてどのような役割を果たしているかを分かりやすく説明した本です。自然科学です。130ページほど。専門的内容を分かりやすく説明しているので、まったくの専門外の僕も、ざらっと短時間でへー、ほー、と言いながら斜め読みしてしまいました。
こういうのをなんと言うのか知らないけど、どうやら「実験生態学」という呼び方があるらしく、研究方法が面白いです。研究室で顕微鏡を覗いて、かおり成分の化学反応を確かめるとかではなく、もっとアウトドアなやり方です。例えば、〈ある植物が匂いに対してどのように反応するかを調べるために、人があまり来ない山中で、その植物の何十体かの枝を切り、そこにナイロン袋をかけて、それを1日後、2日後、7日後…に外す、という実験を行うことで、枝を切られたその植物の隣の枝がどのような反応を示すか〉を調べる、みたいなことをしています。具体的には、車でけっこう遠くの山まで行って、木から枝を取り外して、そして帰ってくる、というのを何日も継続して、やっとデータを得る、という感じです。
美学は五感の研究なので匂いや嗅覚に関する研究もあってしかるべきだけど、現実問題としてはほとんど研究されていないと思いますが、この本は〈自然科学におけるかおりの研究の一事例〉として、人文系の研究者にも分かりやすいです。オススメします。
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このひとは僕がカリフォルニアでえらくわちゃわちゃした時にお世話になったひとりなのだけど、フレンドリーなひとなので、UC Davisにいたたくさんの理系のポスドクの人ーーあのひとたち、どうなったんだろうーーと引き合わせてくれたり、この実験にも一度連れて行ってもらったりもしました。袋を被せられた植物の写真、なんとなく見覚えがある。そういえば、僕が帰国する直前に車を貸したら、ちょうどその車が火を吹いて動かくなくなり廃車手続きをしてくれました(廃車手続きも終えてから連絡が来た。怪我なくて良かったよ、ほんと)。
で、久しぶりに連絡があったのです。本が出る、そこには、名前は出てこないけど僕が二箇所に登場する、ということでした。で、なんのことだろう、と思いながら探したのだけど、1つ目は分からなかったけど、2つ目は分かりました。
まず、2つ目の方。
こちらは読んだ途端に思い出しました。そういえば確かに、カリフォルニアからの帰国便で偶然このひとと同じ便で帰国していて、手荷物検査場で会ったことがあった。向こうは何か用事があるみたいだから僕は先に家に帰ろうと思っていたのだけど、手荷物検査されて、追いつかれた。ついでに思い出したのは、そういえば僕は30代になるまで、入国検査のときはどの国でもだいたい検査されてたし、別室に連れて行かれて全身検査されたこともあったなあ、ということです。凶悪そうな顔つきとかではなかったはずなので、たぶんジャンキーとか運び屋とかそういう感じのひとだと怪しまれていたのではないかと思います。30代以降はなくなったなあ。
1つ目の方は分からなかったのだけど、最初のページに登場していたそうです。
この人は「かおり」という名前なので、「”かおりの生態学”というタイトルで本を書いてみようと思っている」とある友人に言ったところ「ダサい!」と返されたらしく、それが僕だというのです。でも、そんなステキなアイデアに対して僕がそんなこと言うはずないので、それはきっと別人と間違えているのだと思います。
ということで、みなさん、おすすめです。自然科学的なやり方で世界を切り取ると、こんなふうに見えるのだ、とういことがシンプルに提示されています。
2021年12月22日の夜にDOMMUNEで「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」に関するイベントがあるそうです。神戸にいるし、夜なので見れなさそうですが、言いたいことはいくつかあるので、メモを記録しておきます。5時間もあるイベントってどんな感じなんだろう。
以下は、うまくまとめられなかったので、図録に寄稿した「クリスチャン・マークレー再論」には書けなかったことです。誰か、うまいことブラッシュアップしてください。
プラス1アート・ギャラリーで、藤本由紀夫さんが参加している展覧会に。体験型というか参加型の展示。近くの商店街を散歩するのが楽しい。こちらもアーツ千代田のサウンド&アート展と同じく会期短いですが、オススメです。
このギャラリーには何年か前に来たことがあるが、その後、+2が増えたようで、今回は、作家の指示に従いながら+1から+2まで歩く、というイベント作品だった。僕は藤本由紀夫さんの作品だけを実行したが、ちょっとした変化を与えるだけで体験の全容を変容させる手際が何とも洒脱。
あと、この商店街、良い。来年か再来年に向けての企画もありそうで、この商店街を再訪する機会もある。この辺に住みたいな。
CON・CERT waiking from +1art to +2
藤本由紀夫・小寺未知留・佐藤雄飛・林 葵衣・山本雄教・カワラギ・野口ちとせ
2021 11/03(水)ー11/21(日) PM 12〜7(最終日 〜PM5)
休廊:日・月・火曜 *11/21(日)は予約制で開廊
http://www.plus1art.jp/Ja_+1/+1Current.html
視覚的自己を失明で喪失した後、聴覚的自己あるいは振動的自己を構築した著者が、長年の生態音響・振動学的アプローチを通じて、視覚ではなく聴覚だけで人は世界をどのように知覚認識構築しているかを記述したもの。面白くてさらっと読んでしまった。
ギブソンの生態心理学は視覚中心で、音声や聴覚にはあまり触れていない。そこを埋める研究という意義もある。とはいえ、この本は、生態心理学という領域だけでなく、サウンド・スタディーズ全般のなかで理解されるべき著作であることも確かだ。
おそらく、生態心理学あるいは生態学的知覚論的なやり方が、人文学においてもっと普及する必要があるのだと思う。世界や環境や人間の知覚や行動を記述するとき、世界と知覚主体とを区別せずに記述するやり方を。まあ、実はけっこう普及していて、僕が慣れていない、ということでもあるが。
Facebook https://www.facebook.com/katsushi.nakagawa.9/posts/10225895422109316
「文化としての電話」を研究するために、まずは、「文学における電話」の諸相について事例分析を行った博士論文を、単著として刊行したもの、というまとめで良いかな。総じて「文学における電話とは何か?」とか「文化としての電話とは何か?」という疑問に応えるものではないので、メディア論的観点からは物足りないかもしれないが、問いの立て方が面白い。今後に期待。
電話と文学 声のメディアの近代の通販/黒田 翔大 - 紙の本:honto本の通販ストア https://honto.jp/netstore/pd-book_31234330.html
神戸にいるうちに有馬温泉に行きたいな、と思い、ちょっとだけ有馬温泉の近くが出てくるこのマンガを思い出し、紙の本は横浜にあるので、Kindleで購入して久しぶりに読み直してみた。中学生の頃から何度も読んできたマンガだけど、久しぶりに読んでも面白かった。章が進むにつれ変わっていく主人公峠や三人のアドルフの性格と境遇、そして、次々と登場する魅力的な登場人物たち。古城先生やら酒場の女将さんやら憲兵隊本田の息子やら、全員がしっかり描かれている人間ドラマで、面白かった。
また何年かしたら読み直そう。
クリストファー・ノーラン監督の映画は〈映像を楽しむ映画〉と認識すべし。
主演のジョン・デヴィッド・ワシントンは、デンゼル・ワシントンの息子とのこと